新手のETFもどき商品た出たと言う事で、これは知らなきゃいかんだろうと調べてみました。
「Exchange Trade Note」が正式の名称。ETFの正式名称が「Exchange Trade Fund」で、「上場型投資信託」と訳されてることから、ETNは「上場型有価証券」とでも訳せば良いのか?(正規の和名はまだ定まってないっぽい。)
..でもって、名称からたどり着くのは、ETFの債券版みたいなものってこと。(超いい加減。)要するに、何らかのインデックスに連動して価値が変化する債券と言うことでFA。
流石にこれじゃアバウトなのでもう少し突っ込むと、次の様な代物になります。
※ ここでは現状で最も有名なETNと思われる「iPath」について記述します。
(そもそも、「iPath」以外のETNが組成されているのか不明だったり。)
・英バークレイズ社が発行する債券。
・満期も設定されています。(だいたい30年みたい。)
・満期以前のトレードは証券取引場を介して可能。
(要するにETFと同じく、株式の様に売買できます。)
・ETFと同様に、空売りも可能。
・市場ではそのETNが連動するインデックスの値でトレードされます。
例えばINP(iPath MSCI India Index ETN )の場合、「MSCI India Total Return Index」に
連動した価格でトレードされます。
..と言うわけで、ここまでの説明ですと、「ETFとまぁ同じように扱える金融商品」っていうことで、第一段階修了。
じゃぁ、何がETFとちゃうのって言うと、最も重要なのはiPathはバークレイ社が発行し、価格を保障する無担保社債だと言う事。ETFが現物相当の株式なり商品なりを確保して上場しているのに対して、iPathはバークレイ社の信用だけで成り立つ金融商品です。
つまり、ETFならば購入者の負うリスクは、相場の騰げ下げだけですが、ETNの場合は債券のデフォルトリスクも併せて負うことになります。ぶっちゃけ、バークレイがアボーンしたら、iPathは紙切れになっちゃうって言うこと。
まぁ、巨大金融会社であるバークレイズの社債がデフォルトを起こすとは到底思えない訳で、その点での心配は然して不要と思うのですが、今後ETNの種類が増えてくる状況になれば、妙な発行母体のETNは掴まない注意は必要になるんでしょう。
逆にETFと比べてETNは、特に発行側のメリットが大きいと推察されます。なにせ、債券を発行した後は価格を保障すれば良いだけで、裏でポートフォリォを調整するコストは発生しません。当然、マネージメントフィー(信託報酬と言う用語もここでは適切ではないですね)は少なくて良い筈です。
この管理費が安く上がる分だけ、投資家に還元してくれれば優れた金融商品になるのですが、iPathに関してはそれほどマネージメントフィーは安くありません。INPのマネージメントフィーは0.75%であり、高くはありませんが「まぁこんなもんか」程度です。
また、他のメリットとして、現物を伴わなくて良い分、組成自体が物理的に容易と言うことも挙げられます。例えば、以前からプラチナのETFは噂に上がりますが、業者の抵抗から現物の確保が進まず、組成が未だにされません。これがETNならば現物の確保は不要ですから、比較的容易に実現できる可能性がありそうです。即ちETFの仕組みでは実現できない商品がETNならば実現できる可能性を秘めていると言えます。
ところで、ETFに対するETNの本当のウリは別な所にある様です。ETNはETFの様な配当金/利息などの分配を行いません。そもそも、現物を裏で保有している訳ではないので、配当金や利息が発生することが本質的にないのです。即ち、分配金による基準価格の低下も無く、当然、インカムゲインに対する課税も発生しません。これは複利効果を最大限に期待する長期投資家に対しては魅力的な特徴です。
要は「ETNに対する課税は売却するとき以外には発生しない」と言うことです。これは私の様な海外からの投資家にとっても意味のある話です。
あとは良く判りませんが、米国では株式と債券でインカムゲインに対する税制が異なっていたりするかもしれません。この辺りで税制の抜け道を突いている可能性もありますが、日本人には関係ない話でしょう。(たぶん)
さて、iPathですが、現在、次の8種の商品が組成されています。
・iPath S&P GSCI Total Return Index ETN (GSP)
・iPath Dow Jones-AIG Commodity Index Total Return ETN (DJP)
・iPath S&P GSCI Crude Oil Total Return Index ETN (OIL)
・iPath MSCI India Index ETN (INP)
・iPath EUR/USD Exchange Rate ETN (ERO) (ERO)
・iPath GBP/USD Exchange Rate ETN (GBB)
・iPath JPY/USD Exchange Rate ETN (JYN)
・The iPath CBOE S&P 500 BuyWrite Index ETN (BWV)
上3種はコモディティインデックスに連動するETN、4番目がインド株式インデックスに連動するETN、続く3種が外国為替レートに連動するETN、最後のBWVはSP500のオプション取引に関するインデックスに連動するETN、です。(BWVについては別の機会があれば触れて見ます。)
以上で説明終わりなのですが、ひとつ私が判らないことがあります。と言うのはERO, GBB, JYNの様な為替レートに連動するETNに関してです。厳密にどの様なレートをインデックスにしているのか不明なのがいけないのですが、もし現物を保有していたら発生するであろう利息がどのように処理されているのかが判りません。
例えば、同じユーロを対象とするEROとFXEを比べてみると、FXEはEUR/USDのレートに連動するため、保有するユーロ相当の資産から発生する利息分を毎月の分配金として、ホルダーに分配しています。しかし、ETNはその仕組みから一切の分配は行いません。それならば、利息の分だけ基準価格が上昇してくれないと、投資する価値がありません。(誰だって迷わずFXEを買うはずです。)
この疑問に対する合理的な解決は、利息分だけ基準価格が上昇する他はありません。検証するにはFXEとEROの基準価格の変化を比べてみるのが簡単です。しかし、EROは組成から間が無く、Yahoo Financeで基準価格の経過を見ることが出来ませんでした。もう少しすれば、この点はハッキリすると思われます。
ちなみに、コモディティに関しては配当/利息は発生しないので、この疑問はありません。MSCI India Index については、(たぶん)インデックス自体が配当金を織り込んだものになっていると思われるので、インデックスに連動さえしてくれれば、配当金分だけ損すると言うことにはならないでしょう。
最後に、改めて信用リスクの問題を考えてみます。確かにETNは債券なので、バークレイがアボーンしたら、債券としてはデフォルトを起こします。投資したお金はパーで、そのリスクは投資家が負わなければなりません。この点では明らかにETNはETFに劣るのですが、我々日本人の個人投資家からみた場合、海外ETFもETNも然して変わらないかもしれません。..と言うのは、もし海外のETFが上場廃止に追い込まれた場合、その対価を確実に回収できるか、現実問題としてかなり微妙です。それなりと語学力と交渉力を持って、なおかつ時間に余裕がなければ、資産の回収は困難になるとみるべきでしょう。
その点で、ETFもETNも信用リスクは大差ないと考えて良さそうです。これは、「だからETNでも大丈夫」と言う話ではなくて、「ETFでも経営の怪しい組成元の商品は信用リスクを伴う」と言うことです。Wisdom Tree社が組成するETFは運用成績から私のお気に入りなのですが、信用リスクの点では用心する必要があると思ってます。
WisdomTree社がナスダックに上場してくれると、少しは安心なんですが..。