7月に入り本業の仕事内容が少々変わりました。そんなこんなで、何気に忙しく、投資のための日常のワークにも時間が十分に割けない状況が続いています。夜も早々に眠くなってしまい、NYの値動きも十分にウォッチ出来ない日々が続いておったのですが、思わず夜中に眠い目も覚ます、強烈な記事をAllAboutマネーで見てしまいました。↓コレ。
もうかる投資信託はこんなにたくさんある!
まぁ良くぞここまで書いたと言うか、言い切ったというか、その胆力には恐れ入るよりありません。さすがプロな方の意見は一味も二味も違います。(-_-;)
ガイドの方の言い分を平たく直せば、「最近じゃ投資信託がブームになったのは良いんだけど、その分ニワカ評論かも増えてきて、そいつらがまた中途半端な知識で投信を語るもんだから、間違った情報(ノイズ)が巻き散らかされて困ったもんだ」..と言う事らしい。
しかし、ニワカ評論家の1人として、その本音を推測すれば、「最近じゃ投信がブームになって、その分、個人投資家の知識レベルも上がってきたので、今までみたいなボロイ商売がし難くなって困ったもんだ」と言っているとしか思えないワケで..。
そもそも、このガイドさんの主張されるニワカ評論家のノイズとは次の通り。
ノイズその1:投資信託は市場平均に勝てない。
ノイズその2:だから手数料や信託報酬の安い投資信託を探すべき。
ノイズその3:投資信託は銘柄株に勝てない。
(以上原文のまま)
この3段論法、私的には概ね納得出来る主張なんですが、このガイドさんの理論ではこれは間違っているそうな。で、彼の主張に寄れば..、
(1) しかし、ちょっと待ってください!投資信託の成績が平凡で、市場平均
(日経225やTOPIX)に勝てないなんて、どこで確認されたのですか?
となり、
(2) あるいは、大半の投資信託は市場平均に勝てる?勝てない?なんていう
一般論が、あなたにそもそも必要なのでしょうか?
と言う事らしい。でもって、
(3) 一般の個人投資家は、市場平均に勝つ(もうかる)投資信託を1本持って
いればそれで良いと思うのですが、いけませんか?
と言う結論になってます。
そもそも、私自身が100%のインデックス信者では無い訳ですが、それにしても、この論旨はちょっと酷すぎる。つっこみ所、満載です。
ここで、このガイドさんは市場平均に勝てるアクティブファンドが多数あると主張し、その根拠として次のデータを示してます。
全投資信託5年間収益率ランキング
まぁ、ここで示される数字は正しい値なんでしょう。で、このデータを以って、
(a) 5年収益で市場を上回るのは6割にのぼる(320本中、193本)
(b) トップの収益率は市場平均の2.7倍の好成績(TOPIXは9.41%、第1位は25.88%)
(c) 成績のバラツキは、コストの違いを大きく越えている
..と言う事実を認定しています。そして更に、その結論として、
「市場平均に勝つ投資信託がたくさんあるということは、次の悩みをどうやって
絞り込むか?ですね。」
..と、話が進み、最後の結論が、
「投資信託の厳選方法は、専門家や販売会社への賢明なる依存です。」
と結んでおりまする。凄いですね。どっから見てもポジショントークです。本当にありがとうございました。
じゃぁ、何がニワカ評論家からみてこの主張の何が納得できないかと言うと、まず(a)の所。立派なリストが引用されていますが、これらのファンドって、確かに日本株に投資するものですが、新興市場にエクスポージャする投信まで含まれているじゃないですか。アクティブファンドがインデックスに勝てないと言う話は、あくまでも同じユニバースで投資することが大前提。それを無視して、アクティブがインデックスに勝てると言われても、シャープ大先生も困ってしまいます。
このリストを以ってアクティブの有利を主張するなら、いっそ中国やらロシアやらの投信も全部混ぜて、「ほら、大半のアクティブファンドがTOPIXより高リターンでしょ。」と明確に主張して欲しいものです。(^-^;)
それと、このリストでもう1つ考慮すべきは、5年間生き残ったファンドの中から集計している点。当然、成績の悪いファンドはさっさと償還されてしまい5年もたないワケで、5年生き残ったファンドはそれなりに好成績を残したものと考えられます。結果的にこのリストではアクティブに有利なバイアスが掛かっていると見る必要があります。(サバイバーシップ・バイアス)
続いて(b)の部分。トップの成績を収めたとされているインベスコの「ジャパン・エンタープライズ・オープン」ですが、これは新興市場にもエクスポージャを持つファンドです。当然、ボラティリティもTOPIXの比ではありません。それを無視して、トータルリターンだけでファンドの優劣を論じるのは、あまりに初心者的な視点です。
実際、「ジャパン・エンタープライズ・オープン」の過去3年のトータルリターンを見ると、年利換算で僅か0.11%しかありません。この間のTOPIXは約15.5%ですから、この部分を見ればTOPIXの圧勝です。
(c)に関しては、私の考え方が若干異端なこともあって、特に反論はありません。BRICsファンドの様な、ボラティリティが高いファンドについてなら、信託報酬が0.5%でも、1.5%でも有意な差にはならないと思ってます。只、「同じリターンをもたらすファンドなら、コストの安いほうを選ぶべき」と言うのは普遍的な事実です。
長文になってしまったので、ここらで筆をおきたいと思いますが、まだまだ突っ込み所は残ってます。例えば、
「日本はまだまだバイアスや情報格差にあふれた野蛮な市場なので、アメリカ
ほど効率的でも合理的でもありません。ですから、投資信託が市場平均に負
けることも、アメリカほどではないのです。」
本気でそう信じてるなら、もう一度、同ページにも掲げられているマルキールの著作を読み直した方が良いかもしれません。
「良いファンドを選び、それが良い限り持ち続け、悪くなってきたらすっぱりとより
良い投資信託に乗り換える。それが、長期投資家のお手本です。その際に、
コストの安いことは優先順位の高いことではないのです。」
私もマーケットタイミングを図るトレードは否定しない派ですが、ここまで言い切る自信はありませんね。私の場合は投資に楽しみを加える意味でETFのトレーディングを加えてますが、個人が効率的な資産形成を目指すなら、ボーグルが主張するようにタイミングなど考えずにBuy&Holdするのが正解なんだと思います。
また、マーケットタイミングを図って投信を乗り換えて行く方針を採るとするならば、それこそコスト(初期費用)の安さを重視する必要があるはずです。(だからこそ、私の場合は海外ETFで低コストなトレードをしてる訳で..。)
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(追記)
(1)の質問の投げ掛けについては、下記の様なデータもまとめられています。どちらの方が信用に足るかは言わずもがなってもんです。
S&P株価指数vs.アクティブ運用ファンドの分析リポート「SPIVA Japan」を発表