タイトルだけで判断すると、如何にも退職後の資産運用のアドバイスを目的とした書籍だと思ってしまいますが、それは早合点。本書の副題は「時間貧乏からの脱出」となっており、時間の有効活用を説くものです。
まぁ、「時間の活用」をテーマにした本は色々とあるとは思うのですが、本書が特徴的なのはバランスシートの考え方を導入している点。そして、ここで考えるバランスシートは、会計上のBSとは一味違ったものになります。ここが著者の最大の主張なのですが、「カネとモノに時間を加えてバランスシートを考えなさい」という話。
人間は自らの自由時間を会社に売ってサラリーであるカネを得て、それを使ってモノを買う。逆に言えば、モノを我慢すればカネも要らないし、その分だけ好きなことをする自由時間が増えることになります。
要はカネ・モノ・時間はトレードオフされる関係にある。どれに重点を置くかはその人の考え方次第かもしれない。でも、常識的に考えれば、3者のバランスを取って生活を行うことが、人生を有意義に過ごすことに繋がるだろうと言うワケ。
本書ではこのバランスを取るための考え方のヒントが述べられています。そのスタートとして最も重要なことは自らの自由時間の金額換算した価値を知ること。自分の持つ1時間の価値(要するに自給みたいなもの)が幾らなのかを知ることだけでも、生活の組み立て方が大きく変わる可能性を秘めています。
例えば、時給が5000円の人が居たとする。この人がタクシーを使うことで1時間早く目的地に着けるとすれば、タクシー代は3000円でも高くないことになる。同様に、メイドさんを雇うことで家事に割く時間が節約できるなら、節約できる時間の価値とメイドさんに払う給与を天秤に掛けて、その意味のあるなしを考えれば良いって言うこと。
【評価】
個人的に時間の考え方を見直す良い契機になったことで、読む価値があったと思っている作品です。只、万人に進められるかと言うと、必ずしもそうではなくて、読者の年齢を選びます。タイトルには「人生後半戦の」と記されていますが、本書を読んで最も有益なのは仕事が多忙を極める30歳以降の方でしょう。20台の方が読んでも無駄とは思いませんが、ピンと来ない部分があるかもしれません。逆に、「人生後半戦」と言っても、定年を過ぎて年金暮らしの方が読んでも、もはや得られるものは少ないと思われます。
おすすめ度:★★★★☆