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現代アート アーカイブ

2007年11月12日

現代アートを買う①

唐突ですが、現代アートの作品を購入しました。(と言ってもまだ届いてはいないのですが..。)ちょっと長くなりそうですが、この話を書き記しておきたい思います。


実は、この話の発端は一年も前に遡ります。最近は「ガイアの夜明け」で加熱する現代アートのマーケットが紹介されたりして、そのブームが加速してきた感がありますが、当時はまだマスコミ一般で現代アートの話題を目にすることは少なかった様に思います。

そもそも、私が現代アートを買おうと思い立ったのは、書店で「夢をかなえる投資塾」を偶然手にしたことでした。内容的に女性or初心者の投資家向けの書籍でしたし(帯に書かれたコピーも扇動的でしたから)、通常私が読む本ではなかったのですが、偶然斜め読んだ一節にピピッと感じるものがありました。

著者の主張を超約すると、

 ・日本人が知らないだけで、世界的に現代アートがブームになってお
  り、特に中国を中心としたアジアのアートが高額で取引されている。
 ・その一方で、日本人作家の現代アートはまだまだ安値で放置されて
  いる。買うなら今。

と言う物です。

その頃の私は、「世界的な金余り」と「資産インフレの進行」を重要な投資テーマと考えていました。しかし、不動産はREITは買えても現物は流石に高すぎて手が出ない..。そんな時にこれを読んで、「そうか、絵画なら買えるかも」と単純に考えたワケでした。

元来、美術館で絵を観たりするのは好きだったのですが、「絵画はあくまでも観るもの」であって「所有するもの」と言う考えは私の中にカケラもありませんでした。それだけに、「絵を買う」と言う思い付きは、私にとって新鮮でドキドキ感のあるものでした。

(②へつづく)

現代アートを買う②

さて、「現代アートを買おう!」と思い立ったものの、如何してよいか判りません。そこで、何をしたかというと、ネットで"現代アート"をググりまくりました。そして、現代アートを専門に扱うギャラリーを見つけ、アップされている作品を見まくりました。

相当な数の絵を観ている内に、幾つかのことが判って来ました。まず、一口に現代アートと言っても千差万別であること。琴線に触れる作品もあれば、全くかすりもしないしない作品もあります。(と言うか、かすらない作品のほうが遥かに多い。)

また、価格もマチマチである上に、値段が不明の作品も多い。(正確に言うと、ギャラリーに掲載されている殆どの作品は既に販売されてしまったもの。だから値段が出てない。)そして、著名な作者の作品はメチャメチャ高い。

明らかになったことは、予算的に手が出るのは新人作家の作品に限られると言うこと。そして、「まだ世に出ぬ作家の作品で、自分の気に入った作品を見つけ出す」これが私の出した結論でした。

実は、投資家としての視点で考えたとき、ここには大きな問題が潜んでいます。「まだ世に出ぬ隠れた作家を見出す」これは投資としては間違っていない。問題は「自分の気に入った作品を見つけ出す」の部分。

純投資と考えれば、「自分が気に入った作品を探すのでは無くて、他人が気に入りそうな作品を探す」、これが本筋です。所謂、美人投票の理論って奴。リターンを最優先に考えるなら、そう考えるのが当然であり、そうでなければなりません。

しかし、アートを買う場合には少し違うように私は考えました。先ず、自分が気に入った作品を買う。そして部屋に飾る。結果的に価値が上がれば、良いし、価値が上がらなくても自分が気に入っていればそれで良い。

これが証券や債券の様なペーパーマネーとの決定的な違いだと思うのです。アートと言う、人の思いが入った作品に投資するのであれば、作者や作品へのリスペクトを忘れてはいけないと考えました。

純投資と考えれば甘いのですが、「アートは銘柄に惚れて投資すべき」そして「資産として保有すべき」と思うのです。

(③へつづく)

2007年11月16日

現代アートを買う③

「新人の作家さんで気に入った作品を買おう」方針は決まりました。そしてついに、おぉっ!と思える1人の作家さんを発見しました。

その作家さんは当時、初の個展を開いたばかりの方で、ネットに公開されていた作品数も多くはありませんでしたが、どれも「これは(・∀・)イイ!!」と思えるものでした。..でも、残念ながらここでもやっぱりSold Out。

しかし、それまでに結構な数の絵をネット上で見て来て、ここまで気に入った作家さんはいませんでしたから、簡単に諦める気持ちにはなりません。そこで、個展を催した画廊にメールを書きました。

 「他に販売可能な作品はありませんか?」(←これ位は普通?)
 「自分の為に1枚描いてもらえませんか」(←怖いもの知らず。値段も判らんのに..。)

なんとまぁ、シロートならではのチャレンジャーな問い合わせです。只、その時は既に投資としての意識よりも、純粋に「欲しい」と言う意識が強く、それ故に直情的なアプローチになったんだろうと、今になって思います。


さて、程なく画廊からの返信メールが届きました。

 「作家と話をしました。1年待ってもらえるなら製作できるかもしれません。」
 「とにかく一度、画廊まで来て見て下さい。」

さぁ、もう後へは引けません。(^^;)

(④へつづく)

現代アートを買う④

「絵を描いてもらおうと思う」突拍子も無いことを言い出した旦那に驚く嫁さんを連れ立って、早々に画廊へと出かけました。(だって、画廊なんて生まれてこのかた入ったことが無いワケで、1人で行くのは流石にビビリますもんね。汗)そして、我々が向かった小さな画廊で待っていたのは、とても話好きなオーナーでした。

 「絵画なんて今まで買ったことも無いし、画廊に来ることだって初めてですぅ。」

素直に白状した私達に、オーナーさんは色々なことを教えてくれました。それは、現代アートを取り巻く環境や、画廊と作家さんの関係、等々、多岐にわたるお話でした。

 「世界的に現代アートにはブームの兆しがある。でも、日本は遅れている。」
 「その原因の1つは日本の画廊システムにある。」
 「画廊には2つの種類がある。それが貸し画廊と企画画廊。」
 「貸し画廊は作家からお金を取って場所を提供する。要するに不動産屋。」
 「企画画廊は出品料を取らずに個展を開催する。要するにプロモーター。」
 「貸し画廊はリスクを取らない商売。それが画廊の大半を占めている。」
 「日本には企画画廊が少な過ぎる。だから、新人が世に翔くことが出来ない。」
 「現代アートは決して高くない(特に新人作家は)。大人のお小遣いで十分買える。」
 「優良な企画画廊で、気に入った作品を探すのが、最も上手なアートの買い方。」

時間を忘れて話に聞き入りました。まぁ、多少のポジショントークは入っているとは思うのですが、その主張は概ね理解できるものであり、大変参考になるものでした。

そして、最終的に作品の作成を依頼しました。納期はおよそ1年待ち。ちょっと心配していたお値段も幸いにも許容の範囲。長手長さ1m程度のサイズ(初めてのくせにデカイ絵を頼んでるし..)をオーダーしましたが、お値段は単元100株のちょっとした銘柄1枚程度でした。この位のお値段であれば、必要なときに何かちょっと売れば資金は用意できそうです。

(⑤へつづく)

2007年11月18日

現代アートを買う⑤

1年が経ち、作家の2度目の個展が開催されました。そして、私が製作依頼品も、個展の中心作品として展示の一角を飾りました。

私が個展を訪れたのは展示期間の半分を過ぎた頃でしたが、作品の大半は売約済みとなっており、小ぶりの作品数点を残すのみという状況です。なんでも、作品の大半は個展の開催前に売約済みとなってしまい、開催日の時点で既に購入可能な作品は僅かしか残っていなかったとか..。

結果的に、サイズの大きな作品を購入するためには注文制作をお願いするしか無かったわけで、1年前に私が取ったちょい無謀な行動も、あれはあれで正解だったと今にして思います。
個展の際に有数な現代アートのコレクターの方にお会いする機会があり、「あの作品を購入したんですよ」と伝えたところ、とても羨ましがれると同時に、「良い購入の仕方をされましたね」と言う言葉を頂きました。もっとも、「アート作品の初めての購入としては、稀有なケースですね」とも言われちゃいましたが...。(^^;)

そのコレクターの方には、「作家の人気がでれば作品の値段は簡単に10倍になるし、この作家さんも人気になる可能性が高いと思う。」と言われました。確かに、価値が騰がるならば、それに越したことはありません。しかし、作品をここまで気に入ってしまうと、生活に貧する様な状況にでもならない限り、もはや価値が幾らになっても手放そうという気にはなれそうもありません。

(⑥へつづく)

現代アートを買う⑥

最後に、改めて現代アートを資産運用の側面から考え直しておきます。端的に言えば、アート作品は流動性の低い資産クラスです。商品の一種と考えられますが、一点物であると言う希少性に起因するプレミアムと文化的価値を考えると、単なるコモディティの一種として括ってしまうのは、本質を外している様に思います。

ポートフォリオの分散として考える場合、アート作品は不動産の一種として捉えるのが最も近いように思います。なので、後は自らのポートフォリオにどの程度の不動産を組み込むかを考えれば良いことになります。私の場合、不動産とコモディティを合わせて、総金融資産の10%以内と決めていますから、ここに現代アートの作品も併せて計上することになります。(但し、アート作品は家賃収入の様なインカムは一切もたらしません。その一方で、経年的な減価もしません。)

只、アート作品の流動性の低さに警戒をするならば、総資産に占める割合を他のコモディティ銘柄とは独立して設定した方が良いかもしれません。ちなみに、現在の私のポートフォリオでは、アート作品の占める割合は1%弱になっています。この上限を2%~3%迄アップしないと、更なる作品の収集は出来ないことになります。

実際、アート作品をアセットアロケーションに組み込むことの何が怖いかって、それは「作品を1つ手に入れると次がまた欲しくなってしまう」と言うアートの魅力そのものに有ります。その魅力に如何に抗するかが問題で、気付いたらアート作品に囲まれていて、一方で「アセットアロケーションがズダズタ」と言った状況だけは避けなければなりません。

株式では「銘柄に惚れるな」と言いますが、アートの場合は如何しても作品に惚れてしまいます。そこが最大の問題なんだと思います。

2008年03月17日

道楽じゃない 美術品投資

今週から日経ヴェリタスが正式発行されました。我が家にもサービスで向う10週間無料でお届けしてくれるとのことで、早速読んでみたワケですが、個人的に目を引いたのが掲題の美術品投資のネタ。

2ページの見開きで取り上げるほど、美術品投資が注目を集めてきているのかと、ちょっと驚き。..とはいえ、内容的には、オークションによる取引の売上と落札価格の上昇を伝えるだけのごく薄いもの。日本の美術界の問題とか、個別の作家に対する言及などは特に無く(ぶっちゃけ、現代美術と近代美術も一括りですし)、特に有意な情報はありませんでした。

一方で、気になったのはアート作品をミドルリスクの資産と位置づけていること。美術品投資全般をミドルリスクと言い切るのは、如何なものかと思われます。特に、一定の流動性が保たれているかの様な全体の論調が気になります。流動性リスクが美術品投資の最大のネックであり、これは他の金融商品と比べるべくもありません。投資的に見て、お手軽な記事になりすぎです。もしかすると、オークション会社とのタイアップ記事なのかもしれません。

只、末文として書かれている 「鑑賞を楽しみ精神的な豊かさを味わえる価値と、資産としての金銭的価値をバランスさせることが重要と言えそうだ」 には、100%同意できます。

いくらオークションが身近になってきたとは言え、アート作品を購入する場合の最良の方法は画廊で購入することだと思います。(欲しい作品を入手することは結構大変ですが、価格的には圧倒的に安いです。) 様々な画廊に通って知識を吸収してから、自分が真に欲しい作品を決めて購入するぐらいの余裕がなければ、アートへの投資は考えないほうが良いでしょう。(それがまた楽しみなワケです。)

4月には「アートフェア東京2008」と「101東京」と言う2つの大きなアートフェアが同時に開催されます。興味のある方は、先ずは見物して見るのが良いと思います。(更に、この時期にはシンワアートのオークションも開催され、アート界の祭り状態になります。)

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