競馬に関わる数学的な要素について考えた結果を、備忘録の代わりに書き残して行くシリーズです。(一覧はこちら)
2回目の今回は単勝率とその他の的中率の関係を整理します。
※ 数学的な意味で、厳密には不適切な表記があるかもしれない点はご容赦下さい。一方で、内容に関して本質的な間違いがありましたら、ご指摘を頂けますと大変助かります。
2-1.単勝率と馬単の的中率の関係
【設問】
A,Bの2頭の馬の単勝率がそれぞれ$P(A),P(B)$とする。このとき、このレースがA→Bの馬単で決着する確率$P(A\toB)$を求めよ。但し同着は発生しないものとする。
【回答】
【証明】
まずAが優勝する確率は$P(A)$である。つぎにAが優勝したとき、Aを除いた馬の中でBが1着になる確率は次の式で求めることが出来る。($P(A)$と$P(B)$は同時に発生しない点に留意する。)
従って、A→Bの馬単で決着する確率$P(A\toB)$は次式で求めることが出来る。
2-2.単勝率と馬連の的中率の関係
【設問】
A,Bの2頭の馬の単勝率がそれぞれ$P(A),P(B)$とする。このとき、このレースがA-Bの馬連で決着する確率$P(A-B)$を求めよ。但し同着は発生しないものとする。
【回答】
【証明】
このレースがA→Bの馬単で決着する確率を$P(A\toB)$、B→Aの馬単で決着する確率$P(B→A)$とすれば、A-Bの馬連で決着する確率$P(A-B)$は$P(A\toB)$と$P(B\toA)$の何れかが発生する確率なので、
である。ここで2-1に示す公式から2つの馬単の的中率を求めると、
となる。
2-3.単勝率と連対率の関係
【設問】
馬Aの単勝率が$P(A)$のとき、馬Aの連対率$Q(A)$を求めよ。
【回答】
不定
【証明】
まず、Aが2着となる確率を$P(A2)$とすれば、Aの連対率$Q(A)$は
で求めることが出来る。
つぎに、単勝率$P(A)$から$P(A2)$を求めることを考える。
今、出走頭数がn頭で、A以外の馬の単勝率を$P(i)\scriptsize{ i=1~(n-1)}$とする。このとき、i番目の馬が1着で、Aが2着となる確率$P(i\toA)$は2-1に示す公式から
ここで1-1で示した証明から、Aが2着になる確率はA以外の馬からAへの馬単の的中率の総和となるので、
ここで、$P(A)$と$P(i)$の関には
が成立するが、②式を用いて①式の$P(i)$を消去することは出来ない為、①式を$P(A)$のみで表すことは出来ない。即ち、$P(A2)$を定めることが出来ないため、連対率$Q(A)$も定めることは出来ない。
【補足】
$P(A2)$を求める為には全出走馬の単勝確率$P(i)$が既知である必要がある。このとき連対率$Q(A)$も定めることが可能になる。
同様に、Aの単勝率$P(A)$からAの複勝率$F(A)$を求めることも出来ない。$F(A)$を求めるためには、$P(A2)$に加えてAが3着になる確率$P(A3)$を知る必要があるが、これを求めるには同様に全出走馬の単勝確率$P(i)$を知る必要がある。