2018年度グリーンファーム募集馬の検討(関東編)

2018年度のグリーンファーム募集馬の情報が出揃ったところで、個々の募集馬について検討した内容を残しておきたいと思います。只、各仔馬の基本的なスペックについては、既にこの辺りで語っていますので、今回は厩舎、馬体、測尺、価格などの情報を中心に考えたところをメモしておきます。まずは美浦所属の7頭から。

【注意】
・あくまでも個人的な見解です。
・簡単に考えを変えることがあります。
・相馬眼はありません。特に歩様の良し悪しは分かりません。
・馬に優しく厩舎には厳しいです。


ところで、検討を始める前に一つ注意点なのですが、今年のグリーンファームのカタログ写真は少々以前に撮影された気配があります。カタログの写真と会報の特集記事の写真を見比べると、仔馬が結構成長していることが判ります。また、カタログ写真と動画を比べても、動画の方が仔馬の成長が感じられますので、駐立姿勢を評価する場合はカタログの写真ではなく、動画を一時停止してチェックした方が良いかと思います。

1.アースサウンドの2017

ガーデンコンサートの半弟で、父はオルフェーヴルに変わります。所属厩舎は同じく尾関厩舎に決まりました。厩舎の能力に疑うところはありません。募集価格は2500万円で、これはオルフェーヴル産駒で昨年募集されたアスティを上回る値付けです。駐立写真をみると前駆も後駆にも筋肉の張り出しがみられ、幼い印象を受けたアスティと比べるとかなりガッシリとした印象です。これは1月生まれと言う部分も大きいと思います。馬体重の発表がされていませんが、測尺を見る限り小さいことはありえず、むしろ大きすぎを心配するレベルでしょう。
母アースサウンドはダートの短距離で活躍しましたが、本仔は脚が長目で、繋ぎもやや寝ていることから、芝のマイル辺りで走れそうな気がします。オルフェーヴル産駒は晩成傾向であることと、小さく出る仔が多いことが問題点ですが、本仔はその何れもクリアしている様に思います。そう言う意味で、美浦の最高額募集になったことは頷けるのですが、オルフェーヴル産駒は昨年も美浦所属で2頭募集されており、食傷気味な感想を覚えるのも事実です。ちなみに、育成先牧場は不明ですが、恐らく兄姉と同じくノーザンファーム育成になるものと予想します。

2.アースリヴィングの2017

こちらはアースビルボードの全弟です。厩舎は残念な予想通り、兄と同じく小笠厩舎に決まっています。母馬からの繋がりではありますが、正直言って新味に欠けてしまいます。兄アースビルボードの募集時と測尺を比較すると、本仔の方が一回り大きく出ている模様で、オルフェーヴル産駒としては評価できるところです。只、駐立写真を比較するとアースビルボードの方が背中が短く、お尻の形も好みです。
8月下旬の体重は426Kgで、一口馬主DBの馬体重成長シミュレーションによるデビュー時の予測体重は496Kgとなりました。これくらいの体重に成長すれば、オルフェーヴル産駒としては十分以上でしょう。
何れにしても、本兄弟の課題は生まれ月の遅さです。晩成傾向で勝ち上がりに苦心するオルフェーヴル産駒にとって、これは結構なハンデになる筈です。兄と同様、本仔も即満口にはならないと思いますので、まずは兄のデビュー結果を様子見するのが良策かと思います。
なお、本仔については育成先の決定に注意を払っておくべきです。1つ上はチェストナットファーム、2つ上はノーザンファームの育成でした。何れに預けられるかで、評価は大きく変わってきます。

3.ナショナルホリデーの2017

フロールシータの半妹で、父は産駒の活躍が著しいロードカナロアです。注目の厩舎はグリーンファームの預託馬が多い矢野厩舎となりました。只、エクストラファインが新馬戦に優勝して以来、長期間グリーンファーム預託馬の勝利が無く、2着~3着が目につくのは勝ちきれない印象を感じます。但し、厩舎としては年間20勝を続けており、リーディング50位前後をキープしている点については、美浦の厩舎としては頑張っていると言って良いでしょう。
駐立写真を見ると腰高でこれから成長しそうですし、前駆よりもトモの発達が目立ちます。ロードカナロア産駒ですが、脚は少なくとも短足ではなく、短距離と言うよりはマイル~中距離までこなせそうな印象です。母ナショナルホリデーとその産駒は中距離で結果を出していますので、牝系の特徴を受け継いでいるのかもしれません。只、これは悪い話ではなくて、「ロードカナロアは母系の良さを生かす種牡馬」と見なされている点からも、むしろ長所となるかもしれません。
8月下旬の体重は432Kgで、一口馬主DBの馬体重成長シミュレーションによるデビュー時の予測体重は448Kgとなりました。出来ればもう少し大きく成長して欲しい所ですが、それを様子見するのは人気的に難しいかと思います。なお、管囲が19cmと言うのは下限ギリギリで不安材料ではあります。

4.リボントリコロールの2017

母リボントリコロールの忘れ形見となった仔馬です。厩舎は田中博康厩舎となり、調教師デビューから2年連続でグリーンファームからの預託となりました。昨年はクィーンスプマンテの産駒、今年はリボントリコロールの産駒と言うことで、実績はこれからですが、クラブからの期待値の大きい厩舎と言えるでしょう。
父はルーラシップが配合されています。これは小さく出る初仔を雄大な馬格のルーラーシップでカバーすることを期待した可能性がありますが、測尺の数字をみると若干ですが小さめに出てしまった感は否めません。8月下旬の体重は425Kgで、一口馬主DBの馬体重成長シミュレーションによるデビュー時の予測体重は434Kgとなりました。
駐立写真をみると、真っ先に脚の長さが目に付きます。筋肉の付き方はまだ甘いですが、体が多少薄いのは中距離以上を走る点では悪くありません。軽い曲飛はキレる末脚を生み出しそうです。歩様の良し悪しは分かりませんが、それでも柔らかく歩けている所は好印象を受けました。
出来れば成長を様子見したい仔馬ですが、人気の有無が読み切れません。即満口にはならない気もしますので、クラブに応募状況を問合せしつつ、ギリギリまで待ってみるもの一考かもしれません。ちなみに、本仔の下にもルーラシップが配合された経緯からみると、本仔の出来はそれなりに良かったものと推察されます。

5.ファビュラスセンスの2017

ファビュラスギフトの半妹で、父はストロングリターンに変わりました。ファビュラスギフトはデビュー2戦して勝ち上がれそうな雰囲気を見せてくれましたが、それも受けてか本仔は200万円高い値付けとなりました。
只、値段が上がった割には駐立写真が寂しい印象を受けます。トモの幅が狭く寂しく映りますし、管囲も危険領域の18cmです。これが遅生まれであれば、ここから一変する可能性に賭けてみる手もありますが、2/10生まれとなると結構リスキーな状況です。2月下旬の体重も418Kgで、一口馬主DBのシミュレーションでは、デビュー時の予想体重が434Kgとなりました。ここから下振れする様だと、厳しい状況になるでしょう。
血統配合的にも今一つピンと来るところがありません。ストロングリターンの血統配合はNijinskyの父母間クロスを作ることが成功パターンであると思われるのですが、その重要な血が母系にはありません。
預託先は黒岩厩舎ですが、年間10勝前後でリーディングも100位前後に低迷しています。マネージメントの中身は判りませんが、表面的な数字だけ見れば不安要素となります。
今後、順調に姉が勝ち上がれば本仔の評価も自然に上がるものと思いますが、現時点ではストロングポイントが見出せません。まずは成長具合を様子見して見極めるのが最善手かと思います。

6.ガヴィオラの2017

ノーザンファーム生産の1頭で、父はキンシャサノキセキになります。1000万円と言う安価な募集金額から、何か理由があるだろうとは思いましたが、測尺で理由が判りました。管囲が18.5cmの危険領域で、8月下旬の体重は394Kgと400Kgを割り込んでいます。但し、5月生まれと言う事情もあって、一口馬主DBの馬体重成長シミュレーションによるデビュー時の予測体重は450Kgまで上がると出ました。
駐立写真をみても幼い印象は拭えず、全体に筋肉の付き方もイマイチです。只、歩く姿を見るとキビキビと歩けており、首も上手に使えている印象です。ちなみに、パンフの写真をみると脚が標準長に見えますが、動画で駐立状態をチェックすると胴長短足気味に映っていますので、血統背景からしても短距離適性と見て良いでしょう。
現時点では小さくて安価ですが、成長して化ける可能性も感じさせる仔馬です。父キンシャサノキセキは早熟傾向ですので、5月生まれのハンデをカバーしてくれるかもしれません。何れにしても、即満口にはならない仔馬ですので、グリーンファーム募集馬らしく、入厩ギリギリまで様子を見るのがベストでしょう。
ちなみに厩舎は高柳瑞厩舎に決まりました。近年はリーディングも100位を割り込んでおり、正直成績が冴えません。個人的にはレーヌジャルダンの使い方で厩舎力の不足を痛感しています。只、芝よりもダートの成績の良い厩舎なので、本仔がダート馬ならば良い結果に繋がるかもしれません。

7.エイシンバンバの2017

当初発表された募集馬一覧の中に名前がありながら、価格発表段階で消えてしまったエイシンバンバの2017でしたが、まさかの特別募集馬として復活してきました。特別募集馬の見解についてはこちらも併せて参照を願います。
父が昨年種牡馬デビューしたエスポワールシチーで、産駒はバリバリのダート馬が出ます。中央競馬でこそ目立ちませんでしたが、地方競馬では種付数を考慮すれば実質的にリーディング上位の好成績を残しています。また、中央競馬でも登録数は少ない(デビュー40頭)ですが勝ち上がり率は50%近い数字を記録しており、率でみれば中央でも隠れた好成績を残しています。特に、エスポワールシチーはRobert系種牡馬の例に漏れず、牡馬が牝馬に比して優勢ですので、その点でも牡馬に出た本仔は評価が上がります。血統配合的には母方にMr.Prospectorの血があり、Robert+Nureyev+Mr.Prospectorのゴールドアリュール産駒の成功パターンを形成します。これはコパノリッキーと同じ血統構成です。
駐立写真をみると、前後共に筋肉の張りが目立ちます。背中が若干長めに映りますが、これは短足傾向の裏返しでもあり、直飛である点も含めて、マイル以下のダートに適性があると予想します。一方で、動画の動きは硬い印象を受けないでもありません。但し、募集代金0円であることを考慮すれば、多少の懸念は無視するべきでしょう。そもそも、グリーンファームの安価な募集馬について、今の時期に歩様の良し悪しを気にすることはナンセンスかと思います。実際、歩様を気にしていたら、先日新馬勝ちしたサムシングジャストへの応募は出来ません。
8月下旬の体重は456Kgで、管囲も20.5cmあって骨量は十分です。一口馬主DBのシミュレーションでは、デビュー時の体重予測が490Kgと出ています。取り敢えず、ダート馬として必要な馬格はクリアすると思われます。
預託先は新開厩舎となりました。個人的には過去にシンラバンショウを預けた際に「仕上げは外厩任せで、レースの選択も工夫が無い」と感じるところがありまして、NGとは言わないまでも評価は高くありません。只、新開師も芝よりダートを得手としていますので、その点では本仔との相性は良いかもしれません。

<< 関西編に続く >>

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コメント

  1. SHIM より:

    macKyさん、おはようございます。
    興味深い募集馬考察をありがとうございます。

    “グリーンファームの安価な募集馬について、今の時期に歩様の良し悪しを
    気にすることはナンセンス” 確かにその通りかと反省しました。
    シルクHCの出資検討をした後で、キャロットCのカタログと同時に届いた為、
    どうしても同じような視点で募集馬を見てしまっていました。笑

    グリーンFへの出資自体にも少し悩んでいる部分はあるのですが、
    多くの募集馬を入厩直前まで様子見できるクラブというのは貴重な存在ですので
    今後もmacKyさんのブログを参考にさせて頂いて、悩んでみたいと思います。

    • macKy より:

      SHIMさん、

      コメントありがとうございます。

      自分はグリーンファームしか知らないわけですが、個々のクラブには各々の特徴があると思いますので、美点を見ながらそれに合わせてやって行くか、自分に合うクラブを探すのか、何れの方法を選ぶしか無いものと思います。

      自分が重視しているのは、希望する仔馬への出資の道が開けていること、口取りをすること、ゼッケンを集めること、等ですので、グリーンファームはなかなか自分に合っていたりします。

      個々の特徴は尊重して、認め合って行ければ、各種の掲示板に見られるような原理主義者の如き論争は無くなると思うのですが…。そりゃあ、収支を優先する人、重賞勝ちを優先する人、愛馬との関わりを優先する人など、評価軸が異なる人が自分の尺度だけしか認めなければ、話の落ち着きようもないですから。

      すみません、最後は話が逸れてしまいました。今後とも宜しくお願いを致します。

  2. SHIM より:

    macKyさん、丁寧な返信ありがとうございます。
    私もmacKyさんの仰る通り、一口のクラブや出資馬に求めるものは人其々で、
    他の人の価値観を尊重し認め合う事は大切だと思います。
    その上で、グリーンFさんの特徴や美点は1年にも満たない会員歴の中でも
    感じる事が出来ているのですが、一方で事務手続きのミスが多く不審に思う
    事案があった為に出資を躊躇してしまっています。

    ①出資の電話をして2週間音沙汰無し→手続がされていなかった。
    ②出資申込書の返送が来たが、「会社保管用」だったため連絡 →
    返送するが顧客保管用は送られて来ない為1週間後に連絡→「本日郵送致しました。」
    ③自分の請求明細書と共に他人の明細書が同封されて来る!→
    連絡すると「返送用封筒を送るので返送してください。」
    ④本年の募集カタログにDVDが入っていない→連絡していません。

    自分の出資馬が勝ち上がれない事に関しては、同時に募集されていた他の馬が
    勝ち上がっている為、自分の見る目のなさを嘆くだけで済みますし、そういった部分で
    不満があるわけではありませんし、HPなどの情報量の少なさも入会の前に分かっていた
    事ですので、全て自己責任だと思っています。
    しかし上記の様な事(特に③)があった為に、このクラブの企業としての姿勢に
    不安と疑問を感じてしまっています。

    前回のコメントが言葉足らずで、誤解を与えてはと思い長々と書かせて頂きました。

    こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

    • macKy より:

      SHIMさん、

      不信を感じてしまうに至った事情、推察致します。自分の場合はそのような事務トラブルにあったことはありませんが、もし同様な状況になったら確実に憤ると思います。自分の場合、やって出来なかったことは責めませんが、出来ることをやらないのは大嫌いなので..。一口馬主とは言え金融商品の一種と考えれば、事務処理に間違いがあることは許されべからぬことなのですが、その辺りが甘いと言うのは企業として問題だと思います。「事務処理がルーズ」と言うのを「クラブの特色です」で片づけることは出来ませんからね..。「最低限出来ていなければならないこと」と言うのは確実に存在すると思います。

      一般企業であればエスカレーションしてカスタマーサービスにクレームしたい所ですが、そういうチャンネルそのものがありませんので、如何にもならないところですね..。