グリーンファーム募集馬の傾向分析の2回目です。前回はこちら。
前回は本分析のベースになる募集馬のプレミアム値を求め、プレミアム値と募集馬の活躍状況を分析しました。そして今回は、更に細分化した分析を試みます。
募集馬のプレミアムとは、言うなれば生産者サイドが「どの程度値段を吹っ掛けたのか」または「どの程度勉強した値付を行ったのか」を表す指標です。しかし、このプレミアムの付け方は生産者毎に違う筈です。
例えば、社台及びノーザンファームの募集馬は売れ残った残口は牧場側が引き受けることになっているそうです(以前、クラブから聞いた話です)。つまり、クラブ側から見ると売れ残ってもノーリスクと言うことなので、多少怪しい馬質の仔馬であっても、受け入れることが可能です。言い換えれば、牧場側は最後は責任を持つことを担保に、クラブ側に多少怪しい馬質の仔馬を格安でオファーしてくる可能性があります。但し、格安の馬が全てハズレでは会員の興味を惹きませんから、ある程度は化ける可能性のある仔馬を混ぜて来ることが考えられます。これがディスカウント募集馬の成績がバラツク要因になると考えています。
これに対して、中小零細牧場のケースを考えると、残口を引き取る様な保証はしていないと推測しています(注:こちらはクラブに未確認)。そう推測する根拠は、小さな経営母体の企業がこの様な買取保証をすることは、リスクがあまりにも大きいと言う点に尽きます。
一方でこれが正しいとすれば、クラブ側から見たときに、これらの募集馬が売れ残ることはリスクであり、可能な限り残口を出さずに売り切りたいと言うインセンティブが発生します。(非社台系残口のある募集馬は、入厩時期が遅くなる傾向がある様な気もします。)従って、残口を減らすためには怪しい馬質の馬を混ぜることは出来ませんし、価格もある程度はリーズナブルに設定する必要が出てきます。
以上のように、経営規模の大きい牧場と小さな牧場とでは値付けのあり方は異なるものと考えるのが自然です。そこでまず、生産牧場と募集馬の成績を前回と同様に集計してみます。このとき、白老と社台ファーム生産馬の成績は(6.6.7.31.16)で、ノーザンファームの成績が(1.0.4.6.6)、その他牧場生産馬の成績は(2.0.10.9.10)となります。そして、これを比率に直したものが以下になります。
全体 社台白老 ノーザン その他
準OP以上率 :11% 12% 9% 10%
1000万以上率:18% 24% 9% 10%
勝ち上がり率 :44% 38% 45% 57%
ノーザンファーム生産馬はサンプル数が特に少ないため、数字の信頼性に乏しいのですが、無理にこのデータを読み解くと次の様に理解できます。
・社台ファーム生産馬は勝ち上がり率が低い代わりに、上に進む比率が高い。
・ノーザンファーム生産馬は勝ち上がり率は標準で、上に進む確率は低い。
・その他牧場の生産馬は勝ち上がり率が高いが、上に進む確率は低い。
次に、生産牧場毎のプレミアムと競争成績の関係を調べます。但し、ノーザンファーム生産馬はサンプル数が少なく、これ以上の細分化は意味をなさないため、以降の集計は社台・白老・ノーザンの全てを合わせた社台系牧場として扱うことにします。
そして、社台系牧場生産馬についてプレミアム値と競争成績の関係を集計すると、社台系プレミア(3.4.4.7.7),社台系ノーマル(0.1.3.17.9),社台系ディスカウント(4.1.4.13.6)となり、これを比率に直した結果が以下となります。
全体 社台プレミア 社台ノーマル 社台ディスカウント
準OP以上率 :11% 17% 0% 18%
1000万以上率:18% 39% 5% 23%
勝ち上がり率 :44% 61% 19% 41%
この結果はなかなかインパクトのあるものになりました。社台系生産馬に限ってプレミアム値を評価すると、突出してプレミア馬の成績が優れ、その一方でノーマル馬の不振が目立ちます。これは前回の最後で示した全体傾向をより顕著にしたものと言えるでしょう。以上から、社台系牧場生産馬に出資する際には次のような戦略が考えられます。
・社台生産プレミア馬は信頼できる。
・社台生産ノーマル馬への出資は慎重に。
・社台生産ディスカウント馬は玉石混合。2頭でプレミア馬を上回り得る。
続いて、その他牧場生産馬についてプレミアム値と競走成績の関係を調べますが、その他牧場生産馬はプレミア馬のサンプル数が少ないことから、プレミア馬とノーマル馬を合わせたノーマル以上として扱います。このとき、その他ノーマル以上の競争成績は(0.0.9.2.7),その他ディスカウント(2.0.1.7.3)であり、これを比率に直すと以下の様になります。
その他 その他 その他
全体 ノーマル以上 ディスカウント
準OP以上率 :10% 0% 20%
1000万以上率:10% 0% 20%
勝ち上がり率 :57% 82% 30%
かなりサンプル数が少なく、取り扱い注意の結果ではありますが、プレミア馬+ノーマル馬の勝ち上がり率は際立って高い値を示しています。但し、2勝馬が出ていないことから、価格に見合った活躍と言えるのかは、個別に判断する必要があるでしょう。
さて、ここまでは生産牧場とプレミアム値の関係を分析しましたが、ここからは募集馬の性別とプレミアム値の関係を分析します。
まず、グリーファーム募集馬全体を牡馬と牝馬に分けて各々の競争成績を調べると、牡馬(4.5.8.18.15),牝馬(5.1.13.28.17)であり、比率に直すと以下の様になります。
全体 牡馬 牝馬
準OP以上率 :11% 11% 11%
1000万以上率:18% 26% 13%
勝ち上がり率 :44% 49% 40%
これも巷の流言ですが、「グリーンファームの募集馬は牝馬の方が走る」と囁かれることがありますが、上記の結果を見る限り明確な優位差は認められません。寧ろ、どちらかと言えば牡馬の方が優れている感触です。
次に、生産牧場毎の性別と競争成績の関係を調べます。このとき、社台系牡馬の成績は(2.5.4.15.8),社台系牝馬(5.1.7.22.14),その他牡馬(2.0.4.3.7),その他牝馬(0.0.6.6.3)となり、比率に直すとつぎの通りになります。
牡馬全体 社台牡馬 その他牡馬
準OP以上率 :11% 8% 22%
1000万以上率:26% 27% 22%
勝ち上がり率 :49% 42% 67%牝馬全体 社台牝馬 その他牝馬
準OP以上率 :11% 14% 0%
1000万以上率:13% 17% 0%
勝ち上がり率 :40% 37% 50%
ここで特筆すべきはその他牧場生産馬の牡馬と牝馬の成績の差異であり、比較して明らかに牡馬の方が優れています。牝馬も勝ち上がり率は高いのですが、2勝馬が出ていない点が気になります。そこで、その他牝馬を更にプレミアム値で分類します。このとき、その他牝馬ノーマル以上(0.0.5.1.2),その他牝馬ディスカウント(0.0.1.5.1)となり、率に直すと以下の通りになります。
その他牝馬 その他牝馬 その他牝馬
全体 ノーマル以上 ディスカウント
準OP以上率 : 0% 0% 0%
1000万以上率: 0% 0% 0%
勝ち上がり率 :50% 83% 17%
ここでの結果も極端なものになりました。サンプル数の少なさを考慮しても、その他牧場牝馬でディスカウント馬の成績不信は見逃せない不安材料です。
そして、ここまでのその他牧場生産馬の性別と競争成績の関係をみる限り、次の様な出資戦略が浮かんできます。
・その他牧場の牡馬はプレミアム値に関わらず買い。
・その他牧場のディスカウント牝馬への出資は慎重に。
以上、最後の方は相当サンプル数が少ない中での結果ですので、頭から信じることは大変危険なのですが、それを承知でグリーンファーム募集馬に対する出資戦略を以下の通り総括して、今回の分析のまとめとします。
・社台系プレミア馬は総じて買い。
・社台系ディスカウント馬は見極めが重要。
・高い社台系プレミア馬×1頭より、安価な社台系ディスカント馬×2頭。
・社台系ノーマル馬への出資は慎重に。
・その他牧場の牡馬は黙って買い。
・その他牧場のディスカウント牝馬への出資は慎重に。
最後に、本ロジックを2018年の募集馬に適用すると、次のような出資方針が浮かび上がります。信じるも信じないも貴方しだい。当方は一切の責任を持ちません..。😎
【有力候補】アースサウンドの17,アースリヴィングの17,ナショナルホリデーの17,リボントリコロールの17,バルドウィナの17,デビルズコーナーの17,デフィニットの17,オンシジュームの17,カクテルの17,エイシンバンバの17
【危険候補】ムニラーの17,ジャドールの17,ジュエルオブナイルの17,ファビュラスセンスの17,マウントフジの17
【要様子見】ガヴィオラの17,トロピカルブラッサムの17
コメント
こんばんわ、ちょっとした気づきを、しました。2013から2016まで4年間で、毎年1頭づつで、勝ち上がり率75%の共通している項目が、ありました。
グリーンファームのサービス馬ではないだしょか?
凝り性のmackyさん、いかがですか?
簡単でしょう、失礼しました。
ヒンヒンさま、
なるほど、判ったと思います。つまり、今年のアタリはジャドールの2017と言うことですね。オカルトの類ではありますが、確率は全体平均に対して明らかに乖離していると思います。
折角なので、Targetを使って過去10年分を調べてみました。まず、全グリーンファーム募集馬は211頭いて、内101頭が勝ち上がっていますので、全体の勝ち上がり率は47.8%でした。改めて見て、この数字自体がなかなか良い数字だと思いますが、ヒンヒンさんが気付かれた条件の馬をみると、総計21頭の該当馬がいて、内14頭が勝ち上がっていました。勝ち上がり率にして66.7%と言うのは正に驚異的です。更に準オープン以上も4頭いますので、率にして4/21=19%にも達しています。
もう、何も考えずに黙ってジャドールの2017に出資したくなってきました。(汗
こんばんわ、凄い嬉しいクロフネさんを探して頂きました。好きな馬です。
ヒンヒンは、そんな頭脳はありますん。シンプルにmackyさんの資料から、1500万円の馬が、2歳馬 サムシングジャストまで入れると5馬頭中ー4馬頭が勝ち上がりしています。人気が余り内容ですが、子だしの良い母馬であり、お酒の好きなヒンヒンのベストヒットになってほしい、カクテル2017です。シーザリオの強さを受けついでほしいと思います。1500万は安いと思います、maskyさんファンはクロフネ産駒注目しましょう。
ヒンヒンさん、
てっきり芦毛馬のことを指しているものと思ったのですが、13年度の募集をカウントし忘れていました。13年度の芦毛はマキシマムドパリとパラペーニョペパーの2頭が居たので条件に合致しませんね。しかし、「グリーンファームの芦毛馬がここまで好成績だった」と言うのも1つの発見でした。
「芦毛馬が活躍する」と言うのは確実にオカルトですが、「1500万円の募集馬が活躍する」と言うのは何らかの根拠がある様な気もします。近年、1500万円で募集された仔馬は何れも非社台系牧場の仔馬ですので、非社台系牧場生産馬の中では高額募集の部類に入ると思います。故にこれは、「非社台系の仔馬で自信のある値付けの仔馬は走る」と考えれば良いのかもしれません。何れにしても、カクテルの2017は自分も関東で募集されたら出資を真剣に検討していた仔馬でしたので、きっと活躍してくれるものと期待しています。