前回に続き、もう1頭の出資確定馬であるエイシンバンバの2017について、出資判断をした根拠を備忘録として残しておきます。
エイシンバンバの2017の出資判断
■種牡馬
ゴールドアリュールを父に持つエスポワールシチーは、昨年から産駒がデビューを果たしました。只、繋養先が優駿スタリオンと言うこともあって、社台系種牡馬の様に繁殖の質に恵まれた訳ではありません。初年度の種付料は50万円と安価に設定され、110頭の牝馬に種付けが行われて、60頭の産駒が誕生しました。但し、その半数以上が地方競馬を目的とした繁殖であり、実際に35頭が地方でデビューをしています。しかし、この産駒の残した成績が素晴らしく、27頭が勝利を飾って、世代別賞金ランクでもサウスヴィグラスに次ぐ2位の成績を修めました。更に、地方重賞でも10勝を上げており、これはサウスヴィグラス、シニスターミニスタに次ぐ3位の成績になります。今春、サウスヴィグラスが急逝したことを考えると、今年の種付数のトップはエスポワールシチーに移り変わることが予想されます。また種付料も昨年の好成績を受けて2018年度から70万円にアップしており、今後も上昇することが見込まれます。
一方で中央競馬に目を向けると、地方から転進した11頭を含めて、全35頭が中央デビューを果たし、その内の12頭が勝利を収めています。決して目立った勝利数ではありませんが、全体数の少なさと繁殖の質を考えれば、十分に健闘した数字と見ることが出来ます。実際、勝ち上がり率にして34%と言うのは、ゴールドアリュール産駒と同じ成績です。
ダート系種牡馬のゴールドアリュールとサウスヴィグラスが続けて逝去した現状では、「次世代のトップの座を狙えるポジションにエスポワールシチーは着けている」と言うことが出来ます。
■牝系
母エイシンバンバは米国から輸入された外国産馬でしたが、中央で5走、地方で2走して勝利を上げることは出来ず、4歳にして繁殖入りを果たしました。そして、本仔は初子で兄姉はおらず、産駒の傾向は不明です。正直に言って牝系は寂しく、目を惹く所は殆どありません。但し、母父のRock Hard Tenは米国でダートGⅠを2勝、GⅡを3勝した活躍馬で、1200M~2000Mの幅広い距離で適性を示しています。短距離での重賞勝鞍があることから、そのスピード能力が産駒に伝わることが期待されます。
■血統配合
自分が本仔への出資を決断した根拠の1つがこの血統配合です。近年のダート競争馬のトレンドとして「Robert, Mr.Prospector, Nureyev」の3つの血を併せ持つ配合が上げられており、本仔はこの構成を備えています。
そして、ゴールドアリュール産駒についてこれを見たときに、本血統構成を備えているのがコパノリッキーです。即ち、本仔はコパノリッキーに類似の血統構成を有することになります。
具体的に、母系にMr.Prospectorの血を有するエスポワールシチー産駒は上記の血統構成を有することになりますが、これに該当する中央競馬の現3歳馬(未出走を除く)の成績を調べてみると、20頭中10頭が勝利を挙げており、サンプル数こそ少ないですが、「勝ち上がり率50%」と言う大変優秀な成績を残しています。
■馬体
前にも後ろにもバランスよく筋肉が付いている様子が判ります。背中が若干長目に見えますが、これは短足傾向の裏返しと見ることも出来ます。8月下旬の馬体重は456Kgで、デビュー時の予想体重は490Kgと予測されます。ダート馬としては、もう少し厚くなって貰っても良いのですが、これでも不足と言うことはありません。管囲は20.5cmあって骨量も充分です。前膝の位置は球節より前にあり、膝下も短く太いことから、脚元は丈夫と判断しました。ダートで数をこなしてくれることを期待しています。
一方で、ダート馬にしては若干繋ぎが寝て見える点と、動きは固目に見える点は気になるところではあります。
■厩舎
本仔の出資判断で唯一のネックと考えたのが預託先厩舎です。新開厩舎については過去に愛馬のシンラバンショウがお世話になっており、その引退時のブログ記事で厳しい見解を述べています。ぶっちゃけNG判定一歩手前の厩舎として認識していたのですが、今回は特別提供馬であることから多少のことは目を瞑ることと決めました。
一方で、この機会に改めて調べてみると、現3歳世代の新開厩舎の勝ち上がり馬の数は全部で14頭おり、これは調教師全体の18位(美浦の厩舎に限れば4位)の好成績になります。更に、この14勝の内訳を見ると、ダートで13勝を上げ、芝の勝利は1鞍しかありません。即ち、新開厩舎は明らかなダート偏重厩舎であり、なんとダートに限った勝ち上がり数を調べると、全調教師の中でトップの成績を収めています。
その点からすると、ダート馬であることが確実な本仔の預託環境としては申し分なしと見ることも出来ます。
■価格
本仔が特別適用馬として馬代無料で提供された時は本当に驚きました。事前情報に本仔の名前があった時点で、「募集価格1000万円以下で出資の有力対象」と考えていましたので、これが無料となればノータイムで出資決断が可能でした。
さらに、ここで示した通り、非社台系の牡馬は価格に関わらず「黙って買い」の分析結果が出ていることから、安価であれば安価であるほどより価値が高まることになります。
■まとめ
牝系の貧弱さや、動きの硬さなどに難点が見られる仔馬ですが、一方で血統構成は魅力的ですし、初仔ながら馬格も十分あります。そして、社台系からは募集の難しいエスポワールシチーの産駒に出資できる貴重なチャンスでもあります。その上に、無料の特別提供馬となれば、多少の懸念材料は余裕で無視出来るレベルであり、是が非でも出資したいと考えました。