「フェデリコテシオの理論」の初心者が、これを用いてグリーンファーム所属馬・募集馬の分析を行ってみるシリーズの5回目です。(前回はこちら。)
注意:ここに記す分析は、「フェデリコテシオの理論」の初歩を聞き齧ったレベルの者の見解であり、本来の理論に照らして誤っている可能性は多分にあります。もし誤りが有りましたら、ご指摘を頂ければ幸いです。なお、「フェデリコテシオの理論」について、自分は下記のYoutubeチャンネルの動画を参考に勉強させて頂いています。本稿では「フェデリコテシオの理論」の具体的な適用方法など、詳細には触れていませんので、興味のある方は下記のYoutubeチャンネルなどをご参考にされて下さい。
5回目の今回は、重賞勝馬のボールライトニングを代表に、多数の産駒がグリーンファームから募集されているデフィニットの牝系について、「フェデリコテシオの理論」を用いた分析を行いたいと思います。
1.デフィニット産駒の血統分析
デフィニットの産駒は全体的に短距離適性の傾向にはありますが、個々の産駒をフォーカスして見ると、その特徴はかなり異なっている様に感じます。そこで、4頭のデフィニット産駒(ボールライトニング、トゥルーストーリー、ライクトゥシャイン、シュアゲイト)について「フェデリコテシオの理論」を用いた分析を行うことで、各々の特性について検討を実施します。
■ボールライトニング
優先祖先:インデエアンキング
基礎体力:69%
先ずは京王杯2歳S(芝1400)を制したボールライトニングです。本仔の種付け年の父ダイワメジャーは活性値3の劣勢期でした。その結果、最大活性値の種牡馬は母系の4世代目に位置する、活性値7のインデエアンキングになります。更に優先祖先も4世代目に位置することから、このインデエアンキングがボールライトニングの優先祖先となります。
そこでインデエアンキングの実績を調べますと、独・仏で芝の1200~1400に重賞の勝鞍のあることが判ります。即ち、ボールライトニングの芝短距離適性はこのインデエアンキングから受け継いだものと考えて差し支えないでしょう。更に、基礎体力値も69%と非常に優秀な値を示しています。
■トゥルーストーリー
優先祖先:キンシャサノキセキ
基礎体力:66%
続いて1つ上の半姉トゥルーストーリーについて検討します。本仔も短距離適性でしたがボールライトニングと比較するとあまりにも気性が激しく、芝1400の新馬戦を制した後は、距離を短縮するより術がなく、最終的に新潟1000直でも結果が出せずに引退となりました。
このトゥルーストーリーの父キンシャサノキセキは南半球生産馬なので、誕生日に半年のズレがあることから、本仔の種付け時の活性値は7.5となります。即ち、母系にあるインデエアンキングの活性値7を僅かに上回って、キンシャサノキセキが最大活性値の種牡馬となります。更に優先祖先は1世代目になることから、キンシャサノキセキ自身が優先祖先に決まります。
この様に、ボールライトニングとトゥルーストーリーでは同じ短距離適性でも、父系と母系の異なる優先祖先持つことが判ります。そして、トゥルーストーリーの激しい気性は父キンシャサノキセキの気性を受け継いだものと考えれば納得をすることが出来ます。
基礎体力値は66%で非常に優秀なのですが、「気性面の課題を最後まで克服することが出来なかった」と言う判断が出来そうです。
■ライクトゥシャイン
優先祖先:ゴールドアリュール
基礎体力:53%
次は未勝利のまま地方に転出し、2連勝で中央復帰を果たしたライクトゥシャインについて検討します。本仔の父ゴールドアリュールは種付け時の活性値8でMAXでした。従って、最大活性値の種牡馬はゴールドアリュールとなり、さらに優先祖先は1世代目であることから、ゴールドアリュール自身が優先祖先となります。従って、ライクトゥシャインがゴールドアリュールの特徴を継承するのであれば、その脚質は兄弟とは異り、中距離ダートと言うことになります。
これに対し、実際のライクトゥシャインの戦績はダートの1400にほぼ限定されており、距離延長した場合の適性は不明のままです。距離の判断は厩舎サイドの見立によるものですし、ソエの影響をケアしている可能性もあります。只、この条件では行き詰まりを見せているのも事実ですから、思い切った距離延長を試しても良いのではと思います。
なお、基礎体力値は大幅に低下して53%になっています。これは、ボールライトニングの69%と比べるとかなり見劣りをしてしまいますが、平均値はクリアしていますので懸念には当たらないと考えられます。
■シュアゲイト
優先祖先:デフィニット
基礎体力:56%
次は骨片除去の手術を経て未だデビューに至らない3歳馬シュアゲイトについて検討します。父は期待の擦牡馬キズナですが、本仔の種付け時の活性値は6なので、母系のインデエアンキングの活性値7を上回ることが出来ません。即ち、本仔はキズナに似ることはなく、母系の特徴を引き継いだ産駒となると考えらえれます。更に優先祖先は1世代目に位置することから、母デフィニットが優先祖先となり、本仔の脚質は芝の短距離と想定されることになります。(ちなみに、剥離骨折が発生する前はダート1400でのデビューが検討されていました。)
一方で、基礎体力値は56%ありますから、最低限の値は確保していることが判りますので、まずは剥離骨折を完治させてもらい、デビューを待ちたいと思います。
2.レモンマートルの血統分析
デフィニット産駒の分析に続いて、グリーンファームから現在募集中のレモンマートル(トゥルーストーリーの2018)について分析を実施します。
※2020/3/25:優先祖先の判定に誤りが見つかったため、前面改稿しました。
優先祖先:Featherhill または Lypard
基礎体力:64%
レモンマートルの最大活性種牡馬は母父のキンシャサノキセキであり、キンシャサノキセキは南半球産のため、活性値は7.5となります。その結果、優先祖先は4.5世代目となり、Featherhill または Lypard が優先祖先と考えられます。ここでFeatherhillの競争成績が不明のため、Lyhardを優先祖先とすれば、本仔の脚質は芝の短距離適性と推測されます。
なお、基礎体力値は64%であり、非常に優秀なレベルです。早生まれの影響なのか、育成の遅れている本仔ですが、健康面に優れていれば何れは追いついてくるものと期待できます。
3.トゥルーストーリーの2019の血統分析
最後にグリーンファームから募集されるかは微妙ですが、2019年に誕生したトゥルーストーリーの2019についても分析を実施しておきます。
優先祖先:キンシャサノキセキ
基礎体力:66%
本仔の父ドレフォンは輸入された新種牡馬ですが、本仔が種付けられた2018年の活性値は5でしたので、母父キンシャサノキセキの7.5を上回りません。さらに、優先祖先は2世代目に位置することから、優先祖先はキンシャサノキセキとなり、脚質は芝の短距離となります。ここで気になるのは優先祖先がキンシャサノキセキとなるのは母トゥルーストーリーと同じパターンですから、母と同じ様に気性難に苦しむことが懸念材料として浮上します。なお、基礎体力値は66%で、非常に優秀な値となります。
4.おわりに
デフィニット牝系における「フェデリコテシオの理論」上のポイントは母系にある活性度7のインデエアンキングの血にあると考えられます。これを上回るMAX活性値8を有する父親を配合すれば、産駒は父系に似ることになりますし、下回れば母系に似た産駒となります。この父系似の産駒と母系似の産駒が同程度の割合で存在することから、デフィニットの産駒はヴァリエーションに富んでいる様に感じられるものと思われます。特に、トゥルーストーリーの気性難の原因が父のキンシャサノキセキに求めらるところは興味深いですし、これが現実であれば、トゥルーストーリーの2019は相当リスキーな産駒となるかもしれません。
一方、活躍馬ボールライトニングの優先種牡馬がインデエアンキングとなることを先に示しましたが、デフィニット産駒でもう1頭の重賞勝馬であるデグラーティアも母系似の配合であり、優先祖先は2世代目のHiroo Gardenになります。ここで、Hiro Gardenの競争実績が不明のため、Hiroo Garden自身の優先種牡馬を追いかけると、これがインデエアンキングに辿り着きます。
即ち、「フェデリコテシオの理論」的なデフィニット牝系の成功パターンは、「母系が優先となる配合にして、特に優先種牡馬をインデエアンキングに求めること」と考えることが出来ます。しかし、既にデフィニットは繁殖牝馬を引退しており、トゥーストーリーがその後継となると、インデエアンキングは直接影響力を及ぼさない5世代目に下がってしまいます。これはトゥルーストーリーの産駒から直接インデエアンキングを優先種牡馬とする産駒は生み出すことが難しいことを示しています。トゥルーストーリーの母系はキンシャサノキセキの影響度が大きいため、「産駒の傾向はデフィニットとは違ったものとなる」と考えた方が良さそうです。