VRヘッドセット・Oculus Goを購入してここにレビューを書いてから、早くも2年が経ってしまいました。このレビュー記事はそこそこのPVを頂いたのですが、その後はVR関係を当ブログでネタにしていません。これはOculus Goに飽きたからでは決して無くて、むしろ使い倒して現在に至るワケなのですが、どうしてもVRをネタにしようとすると「ムフフなネタ」に突入する可能性が高く、自主規制して来た次第です。これに対し、今回の話はムフフな要素と無縁ですので、安心してブログネタとすることにしました。
■東京クロノスとは
先ずは「東京クロノス」について簡単に説明をしておきます。東京クロノスはVR環境でプレイするゲームです。アニメやゲームの分野で名立たるクリエイターの方々が集まって「本格的なVRゲームを作ろう」と志し、その資金源としてクラウドファンディングを立ち上げました。このクラウドファンディングは目標の250万円に対し1800万円もの出資金を集めることに成功し、ゲームは2019年3月に正式リリースに漕ぎつけました。
そして、販売された「東京クロノス」の評判は極めて高く、Oculusストアにて日本ゲームとしては初の”Oculus Essentials”に認定されました。”Oculus Essentials”とは1000以上のアプリの中からOculusが8つだけ選定するもので、これは公式から「一押しアプリ」に認定されたことを意味します
※ゲームとしての詳細な説明については、この辺りの専門家のレビューを参照して頂ければと思います。
■今頃レビューを書く理由
それでは何故、1年以上も前に発売されたゲームのレビューを今更書こうと思い至ったかと言うと、”先週ようやくこのゲームをクリアしたから”に他なりません。素晴らしい映画を見た後で、誰かと語り合いたくなることは良くあることだと思うのですが、「東京クロノス」を終えた今が丁度そんな心境に他なりません。少しでもこの感想を誰かに伝えることで、このゲームをプレイされる方が1人でも増えてくれるならば本望です。
前述した通り、「東京クロノス」はクラウドファンディングを用いて資金調達され、開発されたゲームですが、実は自分はこの出資者の1人でした。クラウドファンディングへの参加者にはリワードとしてゲームのダウンロード権が付与されましたので、その気になれば直ぐにでもプレイすることが出来たのですが、手に入れたことに満足してしまい、所謂「積みゲー」として長期放置しておりました..。
クラウドファンディングのリワードで貰ったグッズ
■キャラクターデザイン
さて、ここからは「東京クロノス」を布教するために、その素晴らしかった所を「ネタばれ」無しでレビューして行きたいと思うのですが、それには先ず、自分がこのゲームを長期放置した理由を考察する必要があると感じています。
そして、その大きな理由の一つはキャラクターデザインにあった様に思います。人気イラストレーターLAM氏によってデザインされたキャラクターはエキセントリックと言うか、一般的な可愛いアニメキャラとは一線を隔しています。人によっては取っ付き難さを感じてしまうかもしれません。実際、自分がその1人だったワケですが、ゲームを終えた今では「このゲームにはこのデザインしか有り得ない」と、思うまでになりました。
思うに、「東京クロノス」はVRゲームであるが故に、キャラクターデザインにリアリティを持たせてしまうと、行き過ぎた「怖さ」を生み出してしまう可能性があったのではないかと思います。ゲームの中盤で「名探偵コナン」の犯人役として表現される全身黒タイツ姿の様な人物が現れるシーンがあるのですが、この表現でも背中に寒気を覚えてしまいました。そう言う意味で、これくらいのキャラクターデザインの方が適度に恐怖感を緩和する効果があったのではないかと思います。
■ストーリー
公式サイトのストーリー紹介には以下の記述があります。
あなたが決めて。殺すかどうか。
時が止まったような誰も無い渋谷
この世界に閉じ込められた
幼馴染の高校生達が紡ぐ、疑念渦巻くミステリー
これを読むと、閉空間からの脱出が目的であり、殺し合いの発生するサバイバル系の物語を想像してしまいます。物語のジャンルとすればサスペンスでありスリラーであると考えてしまうのが普通でしょう。確かに、一部では「怖さ」を感じさせる演出はあるのですが、そう言うのが苦手だからといって、このゲームを避けてしまうは余りにも勿体ないです。
ゲームをクリアした今、自分が感じているのは「このゲームのストーリーは極めて良質なファンタジーだった」と言うことです。ファンタジー小説が好きな方であれば、このゲームをプレイしない手は無いと断言できます。
このゲームの登場人物の中に嫌な奴は一人として居ません。トゥルーエンドに至ることが出来れば、大いなるカタルシスが得られると同時に、ファンタジー小説の読後の様な暖かい気持ちに包まれることを受け合います。
個人によっては、ゲームの中盤から後半に掛けて、見るに難い展開があるかもしれないのですが、その辛さは最後のカタルシスを得るために必要な助走に過ぎません。多少厳しくても是非とも最後まで完走して欲しいと思います。
■VRであることの価値
「東京クロノス」は形態として、アドベンチャーゲームと言うよりはビジュアルノベルに属するものと言えます。難しい謎解きは無く、僅かな分岐を全て通過すれば誰でもトゥルーエンドに至ることの出来る難易度です。そう言う意味で、「ゲームで遊ぶ」と言うよりは「小説を読む」と言う感覚に近いと言えるでしょう。
要はインタラクティブな要素は少なくて受動的な視聴が主となります。かつて自分がOculus Goのレビューの際に書いたのですが、「Oculus GoはVRゲーム用としては機能不足である反面、動画の視聴と言う観点では極めてコストパフォーマンスが高いデバイスである」と言えます。即ち、受動的な視聴が中心となる「東京クロノス」は、Oculus Goでプレイするには最適なゲームと考えることが出来ます。
※ 実は「旧来の2Dのアドベンチャーゲーム全般がOculus Goと相性が良い」と考えているのですが、この件は微妙にムフフは話題が絡んでしまうので、稿を改めたいと思います。
さて、ここで問題は「東京クロノスがVRゲームである必要性があったのか?」と言う点です。ビジュアルノベルとしてストーリーが素晴らしいこととVRゲームであることは、必ずしもリンクするものではありません。実際、「東京クロノスのゲームシステム自体は2Dの環境でも構築することは可能であった」と考えられます。しかし、「2DでプレイしてもVRと同じ程度に心が揺さぶられた」とは自分には思えません。そこには明確な違いがある様に思います。
ちなみに、多くの方がレビューの中で採り上げていのがオープニングの演出です。敢えてVR空間の中で2Dのスクリーンを表示して見せた上で、それを打ち破って見せるシーンは、従来のアニメーションでは表現することが出来ません。自分もこのオープニングは必見であると思いますし、実際に何度も見直してしまいました。
■音楽
VRゲームとしてHMDを被ってプレイすることで、音楽がよりダイレクトに伝わって来ると言う効果があります。OPテーマ曲とEDテーマ曲をアニソン界で大人気の「藍井エイル」と「ASCA」が担当しており、この出来がまた出色です。プレイ終了後は耳にリフレインするまで聞き直してしまいました。
特に、OPテーマ曲「UNLIMITED」のサビの部分は、プレイ終了後に改めて読むことで、その意味する所を理解することが出来るでしょう。
僕の全てを空に捧げたはずなのに
今更返さないで
もう枯れ果てたはずの涙が雨に溶けてく
■気になっていること
「東京クロノス」のプレイを終えた今、その感想を誰かと話し合えるとしたら、1つ問いてみたいことがあります。それは「最後にクロノスの世界から戻る前のシーンで感謝の言葉を掛けられるのですが、それは誰に向けられた言葉なのか?」と言う疑問です。恐らく答えは2つ考えられ、自分なりの答えは出ているのですが、他の方がどの様に感じられたのか、是非とも伺ってみたいところです。如何にもVRらしい演出だったと思うのですが..。
■おわりに
「東京クロノス」は、ゲームとしてはシンプルで難易度は極めて低いものですが、そのストーリの素晴らしさは1本の映画やアニメを見るに匹敵します。公式サイトの説明からはサスペンス的なストーリーを想像してしまうのですが、その本質はファンタジックで暖かいストーリーですので、食わず嫌いをせずにプレイして欲しいと思います。(長期間放置していた自分だからこそ強く言いたい..。😅)
ちなみに、前述の通り「東京クロノス」はクラウドファンディングを用いて開発資金が調達がされており、その出資者には名前がエンディングの中で表示される特典がありました。自分も必至で探しましたが、右斜め後ろの下方に自らの名前を見つけたときは、何となく自分もこのゲームに参加できたみたいで、ちょっと嬉しい気持ちになりました。
PS.
続編(ALTDEUS: Beyond Chronos)の制作が発表れています。「東京クロノス」から100年後の世界が舞台になる様です。2020年リリース予定とのことで楽しみです。