2020年度グリーンファーム募集馬の検討④

2020年度グリーンファーム募集馬の検討結果を備忘録として書き残しておくシリーズの最終回です(前回はこちら)。今回は関東所属の残り5頭について検討結果を記して行きます。

【注意】
・あくまでも個人の見解です。
・状況の変化で見解を変えることが普通にあります。
・今年からは歩様についても自分なりに評価しました。
・馬に優しく、厩舎には厳しいです。

【補足】
・プレミアム値についてはこちらを参照願います。

・予測体重についてはこちらを参照願います。


1914.シンギングセンセーションの2019(残口僅か)

■駐立姿勢
寸詰まり気味である一方、胴体に対して首がかなり長いです。肩の角度が急で、繋ぎも短く立っています。トモは極端な斜尻。飛節は標準的で、前膝の角度に不安はありません。筋肉のメリハリはあまり見えません。全体のバランスはやや欠いている印象で、適性の予想は難しいのですが、強いて考えるなら短距離ダートと想像します。

■歩様
歩速はキビキビしていて、前後から見て真っ直ぐ歩けているところは好印象。首の振り方も好みです。後肢の踏み込みはシッカリしていて、飛節もそれなりに伸びていますが、最後の蹴りに力強さを欠く印象です。肩が立っている影響もあるのか、前肢の出はあと一歩で、最後がドスンと落ちる感じに見えるところも気になります。

■厩舎
伊藤大士厩舎に預託されます。これは半姉シングシングシングからの継続になります。厩舎リーディングがこの数年間、100位以下に低迷している点は気掛かりです。シングシングシングが1勝クラスで7戦連続掲示板を記録していますが、これを評価するか否かは出資者個々の求める方向性に拠って異なりそうです。

■価格
募集価格は1200万円です。プレミアム値は-252ポイントで、ディスカウントクラスになります。那須野系生産のディスカウントクラスですが、本仔は牡馬なのでリスク要素はありません。むしろお値打ちなプライシングと考えることが出来ます。

■測尺
「馬体重:444kg、体高:154.0cm、胸囲:175.0cm、管囲:20.0cm(8月上旬)」で、測尺としては全く問題がありません。デビュー時の予測体重は500Kgで、想定通りダート馬であったとしても十分な馬格が確保されそうです。

■総評
第一印象は「お買い得な募集馬」と言うことです。バランスがいまいちだったり、極端な斜尻が気になったり、実が入るまで時間が掛かりそうとか、突っ込み所は色々と見つかるのですが、それでも「那須野牧場生産の牡馬が1200万円」と言うだけで出資候補になり得ると思います。しかも馬格について不安が無く、兄姉も故障なくレースを重ねていることから、1つ勝ってくれれば長く楽しませてくれる競走馬になってくれる様に思います。

1915.ティアラトウショウの2019(残口僅か)

■駐立姿勢
胴伸びがあって、脚は長目。肩の角度は寝気味です。トモ幅は普通以上で前後のバランスは良く見えます。脛は太目で、飛節は曲飛気味。前膝の角度に不安はありません。腰高で成長の余地が大きく、これからまだ変わりそうです。筋肉の凹凸は目立ちませんが、トモには面積があり、これに何処まで筋肉が着いてくるかがポイントになると思います。ドレフォン産駒ですが適性距離はマイル前後と予想します。トラック適性は良く分かりません。

■歩様
キビキビとした歩速が好印象。後肢の踏み込みは深く、飛節も伸びます。前肢の出も良好で、全体に可動域は広いと言えます。筋肉の質感が非常によく、柔らかさと粘りを感じる一方で、緩さはそれほど感じません。

■厩舎
宗像厩舎へ預託されます。グリーンファームから宗像厩舎への預託はウィングソルジャー以来で6年振りとなります。ウィングソルジャーは掲示板を繰り返しながらも故障引退となりましたが、その上のウィングドウィールはオープンクラスまで進んでいます。また、近年の厩舎の成績は50~100位に低迷気味していましたが、今年はリーディング30位台の好成績を残しています。現在66歳で調教師引退まであと4年と少し。この辺りでもう一花咲かせて欲しい所です。

■価格
募集価格は1200万円です。プレミアム値は-202ポイントで、ディスカウントクラスになります。グリーンF募集のノーザンF生産馬の場合、割安馬の方が走る傾向が見られますので、本仔も十分に期待が出来ると考えます。

■測尺
「馬体重:408kg、体高:155.0cm、胸囲:176.0cm、管囲:19.5cm(8月上旬)」で、やや小さ目ではありますが、即NG判定のレベルでもありません。..とは言え、デビュー時の予測体重は438Kgと出ており、出来れば450Kg台には乗せたいところです。

■総評
馬格に不安要素はありますが、悲観するレベルではなく、むしろ筋肉の質感を高く評価しています。縦に深いトモの形も個人的には好みで、関節の可動域も広くて評価が出来ます。これで1200万円の募集はコストパフォーマンスが高いと考えて、出資することを即決しました。ここは、「グリーンファームの安価なノーザンF生産馬は走る」のアノマリーに乗りたいと思います。

1916.ウィズザフロウの2019(受付中)

■駐立姿勢
先ずは胴の長さが目立ちます。体高はそれなりにあるので短足と言えるかは分かりませんが、首は太くて胴に比較すると短いです。背中が長く、トモ幅は狭い。お世辞にも「バランスが良い」とは言えない体型ですが、実はこの体型、父オウケンブルースリと非常に良く似ています。特に首の太さと長さはそっくりと言って良いでしょう。
飛節は直飛気味で、脛の細い所は減点材料です。繋ぎが短く立っているので、トラック適性はダートの方が合いそうですが、筋肉の発達が見られない所が懸念材料です。距離適性は短い方に思えるのですが、血統背景と合致しない所で判断に悩みます。

■歩様
歩速がかなり早いと思います。これが運動神経の良さを示すものであれば良いのですが、気性面の不安につながると心配になります。前後から見て真っ直ぐ歩けているところは好印象ですし、首の振り方も好みです。直飛の影響なのか、後肢の踏み込みがやや浅く感じます。前肢の出も小さくて、全体に可動域が狭い様に見えますので、父の様に長距離がこなせるかは疑問になります。筋肉の質感もイマイチ柔軟性が感じられません。

■厩舎
開業5年目の竹内厩舎に預託されます。グリーンFからはルヴァンヴェール以来の預託になります。厩舎リーディングは100位以降に低迷を続けていましたが、今年はここまでに15勝を上げて50位台に急浮上しており、これにはルヴァンヴェールの1勝も含まれています。社台グループ生産馬の割合が少ない中でこの成績が維持出来るのであれば、評価して良いと思います。

■価格
募集価格は1000万円と格安なのですが、プレミアム値は-132ポイントでノーマルクラスに判定されます。ここで、ノーザンF生産馬はディスカウントクラスの方が走る傾向がありますから、価格的にはストライクゾーンを微妙に外れています。

■測尺
「馬体重:418kg、体高:154.0cm、胸囲:172.0cm、管囲:18.5cm(8月上旬)」で、デビュー時の予測体重は438gと出ました。馬体重については許容範囲と考えますが、管囲の18.5cmは懸念材料と言えます。只、馬体重も軽いので、故障リスクは軽減されるかもしれません。ちなみに、ここでネタにした「馬体重÷管囲^2」の指数値を計算すると1.27と求められ、警戒水域と判断されます。

■総評
なんとも評価に悩む募集馬です。管囲が小さいことや、バランスを欠いた体型など、普通ならば出資対象から外すところですが、ノーザンF生産馬で格安の条件が付くと多少は目を瞑れるところも出て来ます。オウケンブルースリ産駒と言うのもレアですし、父のファンであれば薬指は十分動くと思います。只、父の様なステイヤー適性があるかと言うと疑問が残ります。

1917.ネオヴィクトリアの2019(受付中)

■駐立姿勢
寸詰まりの体型で、相対的に脚と首が長く見えます。肩の角度が立っている割に、繋ぎの角度は寝ています。また、背中が短い分だけトモが大きく見えます。飛節の角度は標準的ですが、脛は細目です。前膝の角度に不安はありません。適性は想定し難いのですが、距離はマイル以下でトラック適性は繋ぎの角度から芝と予想します。カタログの写真ほど、筋肉の凹凸が目立たないところが残念です。

■歩様
歩速が早いのは良いのですが、何かギクシャクした印象を受けます。前後から見たときの外向気味の脚の出方も気になります。後肢はそれなりに踏み込めていますし、飛節も伸びるのですが、前肢の出は今一つです。また、繋ぎが相当緩そうに見えるところも気になります。筋肉はやや硬い印象ですが、筋肉が目立つと言うワケでもありません。

■厩舎
高柳瑞樹厩舎に預託されます。グリーンFから比較的コンスタントに預託のある厩舎で、特に最近はノーザンF生産馬が任されるケースが多い様に思います。厩舎リーディングは100位前後で、昨年こそ40位と健闘しましたが、今年は定位置に戻っています。個人的な感想としてはレースの選択に工夫の見られない厩舎で、NG手前の評価でしかありません。

■価格
募集価格は1000万円と格安。プレミアム値は-202ポイントでディスカウントクラスです。ディスカウンクラスのノーザンF生産馬は過去の成績が優れており、その点では期待が持てる募集馬です。

■測尺
「馬体重:364kg、体高:148.0cm、胸囲:164.0cm、管囲:18.0cm(8月上旬)」で、5月生まれの不利があるとは言え、流石にこれでは小さ過ぎます。全ての尺度で個人的な応募基準に達していません。一応、デビュー時の予測体重は432gと出ましたので、これからまだ大きくなる見込みですが、それでも管囲18cmはレッドゾーンと判断します。ちなみに、ここでも「馬体重÷管囲^2」の指数値を計算してみると1.33と求められ、完全に危険水域になります。

■評価
レアなリーチザクラウン産駒で、カタログスペックでは注目をしていた募集馬だったのですが、測尺を知った時点で出資対象からは外れました。まだ成長の余地があるとは言え、管囲の大きさは成長しても大きくは変わりませんから、厳しい状況は変わらないと思います。出資を検討するのであれば、ギリギリまで馬格の変化を見守ることが必須でしょう。

1918.イヴニングサンダーの2019(受付中)

■駐立姿勢
胴長で短足。肩の角度が立っており、同様に繋ぎも短く立っています。首が太く、飛節は結構な曲飛ですが、脛が太い所は評価します。前肢と管の角度がマイナスである点については要注意です。腰高でこれからまだ成長しそうではありますが、現時点では筋肉の発達も目立ちません。体型から脚質は短距離適性と考えますが、トラック適性の方は予想し難いです。

■歩様
歩速はかなり早目で、少しギクシャクした印象を受けます。前後から見て真っ直ぐに歩けている所は好印象ですが、首の振り方は今一歩です。曲飛の割には後肢の踏み込みが浅く、前肢の出も今一つで、関節の可動域が狭いと言えます。筋肉の発達が目立たない一方で、筋肉の柔らかさも感じません。

■厩舎
奥平厩舎に預託されます。グリーンFから奥平厩舎への預託は相当久しぶりになります。リーディングは例年100位前後が定位置ですが、今年は好調で現時点で50位台を確保しています。

■価格
募集価格は格安の800万円です。1年ぶりの800万円募集ですが、近年の800万円馬はフロリアヌス以外は真っ当に走れてすらいない状況で、安かろう悪かろうの傾向にあることは押さえておきたい事実です。プレミアム値は-452ポイントでディスカウントクラスになります。

■測尺
「馬体重:390kg、体高:146.0cm、胸囲:167.0cm、管囲:18.6cm(8月上旬)」で、ネオヴィクトリアの2019までは行かないものの、本仔のサイズもかなり小さく、個人的な出資基準値を満たしていません。デビュー時の予測体重は436Kgと出たので、馬格の心配はそれほどでは無いのかもしれませんが、管囲の細さは間違いなくリスク要因になります。

■総評
募集価格800万円は格安ですが、それ以外に推せる所が見出せません。短距離馬として見るのであれば、更なる筋肉の発達を確認する必要があります。単に安価なだけでは行き難い募集馬に見えます。


以上、全19頭の評価結果を書き終えましたが、全体的な印象として、今年のグリーンファーム募集馬は例年よりも怪しい募集馬が減った気がします。比較的歩様が素直で真っ直ぐに歩けている募集馬が多かったと思います。また、例年よりも関東馬のレベルが上がった様な気がします。これは一昨年のパーティで、「関東馬の底上げをしたい」趣旨の発言が現実化されたのかもしれません。

個人的にも現時点で4頭の出資が確定しており、これは過去にない状況です。言い換えれば、「それだけ様子見せずに即決しても良いと思える仔馬が多かった」と言うことでもあります。すでに本年度予算は使い切っており、追加出資は難しいのが実情ではありますが、現時点で様子見したい募集馬を上げるとすれば、アースサウンドの2019とオールドパサデナの2019が気になる存在です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする