2022年度にグリーンファームからの募集を期待する仔馬をピックアップするシリーズの最終回目です。(前回はこちら) 今回の5頭は、お馴染の牝系で募集される蓋然性は高いのですが、値段が高くなりそうな募集馬です。出来るだけ価格を抑えてもらえると嬉しいです。
No11:ナスノシベリウスの2021
父 :ブリックスアンドモルタル
母父 :Unbridled’s Song
性別 :牡馬
毛色 :芦毛
誕生日:2021年5月1日
生産 :ハシモトファーム
半姉アレグロモデラート、半兄ハーツコンチェルトの2頭が2年連続してグリーンFから募集されています。ナスノシベリウスは極めて小出しの良い母馬で、デビューした4頭が全て勝ち上がり、3頭は複数勝利を上げています。特にナスノシンフォニーはホープフルS(G1)で掲示板に入る能力馬でしたが、故障による1年超の離脱もあって、そのポテンシャルを発揮することが出来ませんでした。
これまで、ナスノシベリウスにはハーツクライ系の種牡馬が配合されることが多かったのですが、本仔の父は一転してブリックスアンドモルタルに代わります。種牡馬ブリックスアンドモルタルについてはこちらのNo3を参照願います。
ハーツクライと配合した1つ上のハーツコンチェルトの募集価格が4800万円であったことを考えると、同じ牡馬ですから、父が代わっても大きな値下がりは期待薄です。高額で募集された場合は、「それだけ出来が良い」と判断するより無さそうです。
No12:ツルマルオトメの2021
父 :ヴィクトワールピサ
母父 :タイキシャトル
性別 :牝馬
毛色 :鹿毛
誕生日:2021年3月7日
生産 :新井昭二牧場
兄姉のサムシングジャスト、ジャンドゥーヤ、ブリアンツァの3頭がグリーンFから募集されています。特にサムシングジャストはオープン入りを果たし、府中牝馬S(G2)で2着の成績を残し、エリザベス女王杯(G1)への出走を果たしており、本仔はその全妹になります。
父ヴィクトワールピサは有馬記念(G1)を制した後、ドバイワールドカップ(G1)に出走し、日本馬で初めてこれを制すると言う歴史的な快挙を成し遂げました。引退後は種牡馬生活に入り、桜花賞馬ジュエラーを輩出しましたが、その後は目立つ活躍馬を生み出すことが出来ていません。また、ヴィクトワールピサの産駒は成績が牝馬に偏る傾向があり、本仔はその条件に合致しています。
本仔は「サムシングジャストの全妹」の肩書から、募集された場合には一定の人気を博すことが予想できますが、気になるのは母ツルマルオトメの年齢です。母年齢19歳は明らかな高齢出産である上に、前年空胎でもなく、出資判断にはリスクが伴います。その分だけ価格が抑えられると有難いのですが、1つ上のブリアンツァが2000万円募集であったことを考えれば、大きな値下がりは期待できないかもしれません。
No13:ラヴアズギフトの2021
父 :ドレフォン
母父 :Tiznow
性別 :牡馬
毛色 :鹿毛
誕生日:2021年4月24日
生産 :新井昭二牧場
母母ファストアズライトは元グリーンF所属馬で、中央で5勝する活躍をしたのち、繁殖生活に入りました。母ラヴアズギフトに加え、近親のファストアズソング・スーパールミナル・ルーチェミラコロ・ファストアズエバー・グランマリアージュ・ジェルアズギフトもグリーンFから募集されており、グリーンFとの縁故関係が最も強い牝系の1つとなっています。
ラヴアズギフト自身は未勝利のまま現役生活を終えていますが、仔出しの非常に良い母馬で、デビューした5頭の産駒の内、4頭が勝ち上がり、3頭は複数勝利を上げています。
父ドレフォンは昨年初年度産駒がデビューした種牡馬で、初年度産駒から皐月賞馬ジオグリフを輩出した他、高い勝ち上がり率を記録しています。自身が短距離で成績を残したこともあり、産駒にも優れたスピード能力を伝えています。300万円でスタートした種付料は昨年まで据え置かれていましたが、今年はジオグリフの活躍もあって、700万円にジャンプアップしています。ドレフォン産駒に安価に出資出来るのも当歳馬までと言うことになります。
ラヴアズギフトの産駒はその安定した成績からクラブでの人気も高く、昨年募集されたジュエルアズギフトは牡馬で2000万円の募集でしたが、先行申し込み期間で満口となっています。恐らくは、本仔が募集された場合も早期満口は確定的と思われます。
No14:アースサウンドの2021
父 :デクラレーションオブウォー
母父 :Yes It’s True
性別 :牡馬
毛色 :鹿毛
誕生日:2021年1月25日
生産 :ハシモトファーム
母アースサウンドは米国からグリーンFが輸入した外国産馬で、兵庫ジュニアグランプリ(G2)2着、全日本2歳優駿(G1)3着の好成績を残し、オープン入り後も交流重賞を1つ制した活躍馬です。引退後は繁殖生活に入り、初仔以降の産駒は総じてグリーンFから募集されて来ましたが、本仔の1つ上のアースコンチェルトだけはセレクトセールでノーザンFに落札され、最終的にはシルクから募集されるに至りました。只、セレクトセールの落札額が2090万円であったことを鑑みると、「グリーンFとの縁故を袖にしてまでセールに上市した意味は無かった」と断ずるよりありません。牧場がこれを反省するならば、本仔は改めてグリーンFから募集されるものと思います。
父デクラレーションオブウォーはクイーンアンS、インターナショナルSの欧州G1を2勝した活躍馬で、2014年に種牡馬入りした後は初年度産駒のオルメドがフランス2000ギニーに勝利し、早々にクラッシック制覇を成し遂げました。2019年からは日本系種牡馬協会が本仔を輸入して共用を開始し、その初年度産駒が今年デビューを向かえます。日本では新種牡馬の扱いになりますが、海外での繁殖実績は十分であり、種牡馬としての能力に疑念はありません。
過去、アースサウンドの産駒は5頭がグリーンFからデビューし、4頭が中央で勝ち上がり、残る1頭も地方からの復帰を果たしています。この様に、アースサウンドの産駒は安定した成績を残していると言えますが、一方で複数勝利を上げた馬のいないこともまた事実です。そして、この2勝目が遠い原因として、喉や脚元の故障事例が無視できません。言い換えれば、本仔への出資を検討する場合は、馬体の出来を十分に吟味して、不安の無いことを納得することが肝要となります。
No15:ファビュラスセンスの2021
父 :ロードカナロア
母父 :グラスワンダー
性別 :牡馬
毛色 :鹿毛
誕生日:2021年4月30日
生産 :社台ファーム
母ファビュラスセンスは元グリーンF所属馬であり、その産駒ファビュラスギフト・ファビュラスラインもグリーンFから募集されています。特にファビュラスギフトは中央3勝を上げる好成績を残しています。ファビュラスラインより後は配合種牡馬の質が上がってしまい、グリーンFからの募集がありませんが、母年齢的にはそろそろ戻って来て欲しいところです。
父ロードカナロアはディープ&キンカメが去った後のリーディングサイヤー候補の最右翼です。一時的に産駒の活躍が目立たなくなった印象もありましたが、アーモンドアイの活躍を経て馬質の上がった世代が昨年からデビューしたと考えると、改めて成績を伸ばして行く可能性は十分にありますし、本仔のその一翼であるかもしれません。
ここで問題は募集価格です。本仔が種付けられた2020年の種付料は2000万円で、これがロードカナロアの種付料のピークになります。これが流石に高すぎて種付数を減らしてしまったことから、翌年からの種付料は1500万円に下がっています。現在は、キズナ・エピファネイアと言ったライバル種牡馬の台頭もあって、今後も種付け料は下がる方向にシフトすると思います。
昨年、グリーンFから募集されたロードカナロア産駒(ナイトアクアリウム・牡馬)の募集価格が3000万円であったことを考えると、種付け料の差額500万円を加えて3500万円まで募集価格の上昇が見込まれますが、流石に3500万円の募集価格はグリーンFでは高過ぎると思います。もし、価格据え置きの3000万円で募集されるならば、馬体の出来次第で人気化するかもしれません。