少しばかり時間が経ってしまいましたが、今年度のDMM募集馬、コレクターアイテム21への出資が確定しています。以下、その判断にあたって検討した内容を備忘録として書き残します。
■種牡馬
父は2023年度に初年度産駒のデビューするブリックスアンドモルタル。詳細はこちら(キングスミールの2021)のレビューを参照のこと。
■牝系
祖母Antiqu Auctionから連なる牝系で、G1レーシングから募集された母コレクターアイテムは、阪神ジュベナイルフィリーズの前哨戦として新設されたアルテミスSの第1回優勝馬です。現在のアルテミスSはG3格付けを得ていますが、当時のアルテミスSはグレードの無い重賞競走の扱いでした。アルテミスSを制した後は、クラッシック戦線に挑みましたが力及ばず、最終的に古馬準オープンまで進んで繁殖生活に入りました。
本仔はその4番仔で、上3頭は何れも未勝利です。但し、2番仔と3番仔は未出走ですので、母の繁殖能力を疑うのは流石に早計と言えるでしょう。
■配合
父ブリックスアンドモルタルについては産駒がデビュー前であることから、配合上のポイントは見出されていません。
一方で、父の有するStorm Birdのクロスを母系でブリッジする血統構成を採っており、強いクロスが形成されています。このパターンが成功するのか否か、本仔の成績が1つの判断材料となりそうです。
■駐立写真
概ねスクェアな体型をしており、脚の長さも十分あります。目立つのは背中の短いところで、拙作の計測ツールでも32%の低い値が出ています。腹袋が大きく、所謂、長腹短背のスタイルをしています。また、首の長さも比較的短い印象です。
これらの身体的特徴からか、クラブの人気コンテンツ「激アツ馬体診断」にて弥永TMは本仔を「間違いなくスプリンターだろうな。」と断じています。しかし、自分はこの見立てには疑問を持っています・
その根拠の1つは腰高でこれからの成長が見込める点です。ここからの馬体の成長は背中が伸びて来るケースが多々あり、「1歳時の馬体は背中が長いよりは短い方が良い」と自分は考えています。1歳時からゆったりとした背中をしていると、成長して間延びした体型となり、スピード感を失うリスクがあります。それよりも、1歳時点では背中の短い仔を選んだ方が安全係数が高いと考えるワケです。
そして、もう1つの根拠が父ブリックスアンドモルタルの体型です。以下はスタッドインした時のブリックスアンドモルタルの駐立写真ですが、本仔とよく似たスクェアな体型で、背中の短い身体的バランスが見て取れます。首の長さも比較的短い方と言えるでしょう。明らかに本仔の体型は父親似であると考えることができます。
この体型で、父ブリックスアンドモルタルは1800M~2000Mの海外G1を4勝したワケですから、本仔をスプリンターと断じるのはあまりにも早計ではないでしょうか。
■歩行動画
自分が本仔を高く評価したポイントは歩様です。今年から歩様を評価する際に、大腿骨の付け根を軸にした振れ角を測る様に変更しているのですが、本仔の後肢の踏み込みは力強く前に大きく踏み込まれており、前肢の着地点を踏み越しています。また蹴りも飛節が伸び切るところまで地面を捉えており、角度も十分取れています。
また、筋肉の質感は柔軟性を感じる一方で、「緩すぎる」と言った印象ではなく、これも好印象です。
実は、公式サイトに本仔の歩様動画としてアップされている動画はイマイチで、特に左から右に歩くシーンで動きに不安を感じる箇所がありました。自分はこれが引っ掛かっていたのですが、後に公開された動画では全く問題が認められませんでした。本仔の歩様動画の初見で、評価を見限った方が居られましたら、その他の動画も見直してみることをお勧めします。
■誕生日と母年齢(参考1、参考2)
本仔の出産時の母年齢は11歳で、参考1に示す通り成績の良い産駒を期待できる年齢帯と言えます。また、2代母の出産年齢も12歳で、母との平均年齢は11.5歳となり、参考2に示す通り、概ね良好と言えるレンジに入っています。
■生産と育成
本仔の生産と育成は社台ファーム。設備の違いによるものなか、一時はノーザンFに大きな成績差を付けられていましたが、昨年あたりからこの差は縮まる傾向にあります。これには育成牧場に新設された坂路の効果が無視できない様に思います。屋根付き坂路では無い点が、弱点として指摘されますが、「坂路の有る/無し」の違いの前では大きな差異ではありません。
■厩舎
預託先厩舎は美浦の斎藤厩舎。関東の厩舎としては間違いなくトップクラスの厩舎ですが、特に今年は絶好調で、リーディングも全国7位に着けています。
一方で、個人的に重視する指標である、「クラブ馬勝ち上がり率=36%、クラブ馬回収率=111%」は、然して目立つ数字ではありません。これは活躍馬が一部に偏重している可能性を示唆しています。只、これも全体成績の向上と合わせて改善して行くと思います。
なお、本仔の半兄アシュモレアンは斎藤厩舎の管理馬でした。
■価格
募集価格は3500万円で、DMM募集馬の中では平均より安価な部類に入ります。一方で、G1レーシングで募集された1番仔と2番仔は2000万円募集でしたので、これと比較すると市況の高騰を考慮しても、明らかに高い値付けがされています。G1レーシングに卸しても高い値付けの難しいことから、庭先で取引された可能性を感じますが、真偽の程は判りません。
■テシオ理論
優先祖先は母父ハーツクライ。このハーツクライの活性度がMAXの8で、個人的に好んでいるパターンです。テシオ理論通り本仔が優先祖先に似るのであれば、距離適性は中距離以上と言うことになります。一方。基礎体力値は50%で可もなく不可もなしです。
■余談
母コレクターアイテムはG1レーシングでは初の重賞勝馬でした。当然、その産駒もクラブから募集されるのが常ですが、3番仔以降はクラブ外に卸されています。この「クラブ縁故の産駒がクラブ外に提供されるパターン」は、グリーンFにて散々経験して来たパターンであり、これがまた、走ってくるパターンだったりします。今回は、これまでとは反対の立場で出資をしてみたいと考えました。