現在の出資馬の選定指針について、備忘録として整理するシリーズの第1回です。個々の評価要素の説明は次回から実施するものとして、初回は全体的な考え方について触れることにします。(まとめページはこちら)
■加点法と足切り
先ずは複数の評価項目に対して、総合的に評価する方法についてですが、自分は加点法を採る様にしています。すなわち、「長所を評価する一方で、短所には目を瞑る」と言うのが基本的な考え方になります。如何なる募集馬でも粗を探せば見つかるものですし、粗の見つからない募集馬がいたとしても、それは高額であったり、高倍率の募集馬になってしまい、容易に手の届く存在ではありません。自分の様に限られた予算の中で一口馬主を続けるためには、多少の欠点には目を瞑りつつ、光るところの有る募集馬を見つけることが肝要です。
一方で、「欠点に目を瞑る」と言っても限度があって、「これは許せない」ラインで出資馬を足切り(スクリーニング)することは、リスクを軽減すると同時に募集馬検討のための労力を削減する意味で有用です。具体的な足切り基準は個々人が設定することになりますが、自分の場合は次の条件に該当する募集馬は基本的に検討対象から外しています。
・明らかな弓脚(湾膝)
・募集時管囲が19cm未満
・デビュー時予測体重が牡馬420Kg未満、牝馬400Kg未満
・NG厩舎への預託馬
最も重視するのは出資馬が健康に数を走れること。出資馬がレースに出走することが馬主の愉しみの根源であることは疑いありません。言い換えれば、出資馬の故障や病気は馬主にもストレスとなり、これでは本末転倒です。
同様に、自分の考え方と合致しないレース選択や管理を行う厩舎は間違いなくストレスの原因になりますので、同様に出資をしないことが賢明です。イライラしてまで出資をする必要はありません。
■理論より現実
「理論的に正しいか誤っているか」は二の次であって、より重要なのことは「目の前の現実」と言う考え方です。自分の場合、この考え方に切り替えてから、確実に出資馬の成績が改善した様に思います。例えば、産駒の成績の優れない牝系の仔であっても、実際の仔馬の出来が良いと思えば、その現実を優先します。「産駒の成績が優れない」と言うのは飽く迄も傾向性の話であって、目の前の仔馬には関係のない話です。
競馬にはこの様に現実と傾向性を混同する事例が多数存在しており、これらを切り分けて考えることは様々なケースで有用です。例えば配合論は生産者が打率を上げる上では重要ですが、出資馬の選定においては然して重要とは考えていません。「最後に迷った時の判断材料」程度の位置付けで良いと思っています。
■芝の中距離馬
これは「良い/悪い」の話ではなく、方針の話になるのですが、自分は出資馬を選ぶ際に「芝の中距離適性のある馬」を探して出資する様にしています。理由は幾つかあるのですが、最も大きいのは「レース選択に困らない」と言う点です。2000Mを超える距離の番組は出走希望馬の数に対して潤沢に設定されており、フルゲートを割れるケースも多々存在します。
これに対し短距離戦はライバルが多く、優先出走権を逃してしまうと3ヶ月も節が必要になるケースすら存在します。これは未勝利戦の突破が第一関門となる安価な募集馬にとっては相当に厳しい条件と言えます。
つぎにダート馬よりも芝馬を選ぶ理由ですが、これは「芝→ダート替わりで成功するケースはありますが、逆はまず無い」と言う点に尽きます。芝を走れるだけのスピードが足りない場合でもダートでは通用する可能性は残りますが、ダートでスピードが足りなければ対策の打ち様がありません。
以上から優先順位をつけるとすれば、
1.芝の中距離馬
2.ダートの中距離馬
3.芝の短距離馬
4.ダートの短距離馬
の順で出資馬を検討することになります。もちろん、「芝の中距離馬には大きな夢が広がっている」と言う点が、一口馬主の究極の愉しみであることは言うまでもありません。
■可能な限り様子見
最後に、出資判断おいて最も重要なことですが、それは募集馬がどんなに良く見えても満口ギリギリまで出資を我慢することです。如何なる相馬眼の持ち主であっても、様子見には適いません。それは、募集情報では気性難、喉の疾患、虚弱体質、等の重篤なリスク要素を判断することが出来ないことに拠ります。ましてや不慮の事故の可能性まで含めれば、如何に素晴らしい募集馬であっても、慌てて決断することにメリットはありません。
もちろん、出来の良い馬は早期満口になってしまうことから、決断は常に必要ですが、「可能な限り様子見すべき」は普遍的な真理です。複数の馬で取捨を悩む状況ならば、迷わずに様子見出来る方を選ぶべきです。
早期割引、馬名応募、ポイントの失効など、出資判断には相馬と無関係なファクタも存在しますが、これらの2次的要素には過度に捉われない方が、最終的な結果は良いと思います。