今年のGF募集馬であるレーヌジャルダンの2022への出資が確定しています。以下、その出資判断に際して検討した内容を備忘録として記録します。出資決定から随分と時間が経ってしまいましたが、年を越す前に出資馬の備忘録を書いておきたいと思います。
■種牡馬
父ハービンジャーはKジョージ六世&QエリザベスS(G1)を始めに、海外重賞を5勝した輸入種牡馬です。その勝鞍は全て芝の2400M+αで上げたもので、その産駒も中距離~長距離で好成績を残す傾向が見られますが、ペルシアンナイトやナミュールの様にマイルG1を制した活躍馬も存在しています。一方で、ダートでは全く成績を残せておらず、出資馬を選定する際には「芝で走れる馬であるか?」を見極める必要があります。
一時的に産駒の成績の冴えない時期がありましたが、近年はナミュール・ローシャムパークのと言った重賞勝馬を輩出しており、現2歳からもチェルビニアがアルテミスSを制しました。種牡馬としての人気は必ずしも高くありませんが、成績的には再評価されるべき状況にあると思います。
■牝系
本仔の祖母は、グリーンFの唯一のG1馬であるクィーンスプマンテ。母レーヌジャルダンはその3番仔に当たります。クィーンスプマンテの産駒は初仔~5番仔まではグリーンFから募集されましたが、以後はクラブに降ろされることがありませんでした。グリーンFの伝統血統を引き継ぐ産駒と言う意味で、本仔の価値はプライスレスです。
本仔の母レーヌジャルダンはディープインパクトが配合された「両親がG1馬」と言う期待馬でしたが、3戦目で未勝利戦を突破した後は、勝ち星に恵まれることはありませんでした。只、この結果については厩舎の運用に工夫が足りなかった感も否めません(個人的な感想です)。なお、本仔はそのレーヌジャルダンの2番仔になります。
※ 繁殖初年度にはロゴタイプが種付けられた記録があることから、本仔は初仔ではありません。
■配合
父ハービンジャー×母父ディープインパクトの配合からは小倉大賞典(G3)を制したヒンドゥタイムズ、ファルコンS(G3)を制したハッピーアワーなどの活躍馬が出ていますが、超大物と言える馬は現れていません。
一方で、Lyphardの父母間クロスを有するハービンジャー産駒と言う点では、ナミュールがこれに該当しており、配合の観点では良好であると考えられます。
■測尺(参考)
募集開始時点(8/3付)の測尺情報は以下の通り。
体高:158.0 胸囲:173.0 管囲:21.3 体重:472kg
もう少し胸囲が大きいと加点材料になりましたが、全ての測尺値は個人的な出資判断基準をクリアしています。骨量があり、472Kgの馬体には目を惹かれます。一口馬主DBによるデビュー時予測体重は516kgと推定され、競争馬として理想的な馬格への成長が期待できます。
■駐立写真(参考)
気持ち胴長で背中も少し長目ですが、肩が寝て脚長があり、マイル~中距離まで対応することが出来そうです。飛節は曲飛傾向なので、キレる脚の使えることを期待します。
筋肉を見ると、特に目立つのが中殿筋で、既に張り出していて形を認識することが可能です。また、発達するスペースも十分認められます。これが、自分が本仔を高く評価したポイントであり、出資を即決した事由でもあります。なお、前膝の位置は球節よりも位置していて、不安感はありません。
■歩行動画(参考)
参考ページに記した通り、歩行動画で自分の重視するポイントの1つが、関節の可動域であり1完歩の大きさです。以下は、本仔の後肢の可動域を測定したものです。
曲飛傾向であることから、後肢の蹴りで飛節が完全に伸び切っていないのですが、それでも最後まで地面を捉えていて、力強さを感じさせます。一方で、踏み込みについては曲飛の分だけ取り回しが楽になり、踏み込みが深くシッカリとしています。トータルの可動域は十分に取れており、加点レベルと評価しました。
一方、筋肉の質感については、微妙に緩さを感じるものの、自分の重視している「プルルッ」に近い弾力性を感じさせます。これも、自分が本仔への出資を即決した理由の1つです
最後に歩速ですが、キビキビ感が感じられず、やや重たい感じも否めません。恐らくは、これを嫌って本仔の評価を下げた方も多いのではないかと想像しています。只、自分の評価基準としては、「一定リズムで歩けていればOKで、歩速については参考に留める」と決めていることから、これを以て評価を下げる材料にはなり得ません。
■誕生日と母年齢(参考1、参考2、参考3)
本仔の出産時の母年齢は8歳で、参考1に示す通り、出生時母年齢としてはベストに近い年齢です。また、2代母の出産年齢は10歳であることから、母との平均年齢は9歳となり、参考2に示す通り、これも理想のレンジに入ります。
また、本仔の誕生日は3/17なので、参考3に示す通り、理想的な誕生日ではありませんが、懸念するレベルでもありません。
■生産と育成(参考)
社台ファーム生産馬で育成も社台ファームで行われます。一時は生産馬の成績でノーザンFに水を空けられた社台ファームでしたが、一昨年あたりからその差を急速に詰めています。今年のG1戦線もノーザンF生産馬が無双しましたが、それでもダービーと朝日杯を社台ファーム生産馬が取ったことは、社台Fの復活の証左であると考えて良いでしょう。
一方で、外厩に関しては関西所属の社台F生産馬はグリーンウッドTを利用することになるのですが、これもしがらきを有するノーザンFに対して後れを取る要因の一つとして考えられています。しかし、建設中の鈴鹿トレセンが来年から稼働すれば、このハンデも解消が期待できます。
■厩舎(参考)
預託先厩舎は栗東の石坂公一厩舎。まだ開業5年目の若い師ですが、父である石坂正調教師からノウハウを受け継いで、早々に20勝前後の好成績位を記録しており、昨年からはリーディング50位内も確保しています。また、2年目にはテオレーマを擁してJBCレディスクラッシック(Jpn1)を制しました。
一方で、グリーンファームからは預託の実績が残っていませんが、実はベアトリッツの2019が石坂公一厩舎に預託されることが決まっていました。しかし、本馬は育成中の骨折により募集停止された経緯があります。そう言う意味で、本馬は改めての預託馬と言うことになります。
なお、個人的に重視する指標である「クラブ馬勝ち上がり率=69%、クラブ馬回収率=145%」は、極めて高水準で基準をクリアしています。
また、年間出走回数は4.3走で平均値を超えており、管理馬房数あたりの頭数も3.0で平均値です。成績を伸ばしている厩舎ですが、管理頭数がコントロール可能な範囲に抑えられている点には好感が持てます。
■価格
募集価格は1600万円。牡馬にも関わらずこの価格での募集は、他募集馬の価格と比較しても破格と言って良いと思います。安価に募集された理由を推察すると、兄姉の実績の無いこと、父馬に人気が無いこと、等が考えられますが、前述の通り本仔は初仔ではありませんし、ハービンジャー産駒の成績も一昨年から回復傾向にあります。もし、これらを事由として価格が控えられたのであれば、お買い得な募集馬と考えて差し支えないでしょう。
■テシオ理論
本仔の種付けられた2021年は父ハービンジャーの活性値が7であり、準MAXの良好な年回りとなります。テシオ理論の信奉者であれば、近年のハービンジャー産駒の成績回復はハービンジャーが優勢期に入ったことに因るものと考えるかもしれません。優先祖先は父系のShareef Dancerで活性値は7です。アイルランドダービーを制しており、本仔の距離適性は芝の中距離以上と予想されます。また、基礎体力値は46.8%で、概ね平均値です。
■余談
母レーヌジャルダンは自分の出資馬でしたので、その産駒である本仔の出資判断には微妙に甘くなるところがあったかもしれません。しかし、それでも測尺値や年齢などの客観データに裁量の余地はありません。今年のグリーンF募集馬の中で個人的なNo1評価は本仔であり、出資を即断することに迷いは全くありませんでした。