ギリギリまで出資を迷って来たアースサウンドの2022(ダウントゥアース)ですが、ここに来て満口気配が濃厚になったことから、これ以上は粘れないと判断して出資を決断しています。以下、出資判断に至った事由について備忘録にまとめます。
■種牡馬
父ジャスタウェイは天皇賞(秋)、安田記念の国内G1を制した活躍馬で、中でもドバイデューティーフリー(G1)を圧勝し、ワールドベストレースホースランキングで世界ランク1位を得たことで知られています。ここで特筆すべきは距離適性の広さ。1600Mの安田記念と2000Mの天皇賞(秋)を制した他、2400Mのジャパンカップでも2着の成績を収めており、スピードと距離の能力を兼ね備えた種牡馬として成功が期待させるものでした。
実際、初年度産駒のヴェロックスはクラッシック戦線で、皐月賞2着・ダービー3着・菊花賞3着の好成績を残し、父と同様のスピードと距離適性の広さを証明して見せました。そして、2つ下のダノンザキッドはホープフルS(2000M)を制して産駒初のG1馬となると同時に、マイルチャンピオンシップ(1600M)でも2着に入っています。さらに、芝に限らずダートでも活躍馬を産出しており、マスターフェンサーが米国クラッシックに参戦した他、テオレーマがJBCレディスクラッシック(Jpn1)を制しています。
一方で、産駒全体の平均成績は必ずしも芳しいものでは無く、2年目の産駒はAEIが1を割り込む状況でした。種付け頭数は徐々に減少し、2021年には社台スタリオンからブリーダーズスタリオンに移籍をするに至りました。本仔はそのブリーダーズスタリオンへの移籍初年度に種付された産駒ですが、近年は配合の成功パターンが明らかになってきたのか、AEI値がV字回復傾向にあります。
■牝系
母アースサウンドはグリーンFから募集された外国産馬で、2歳時から全日本2歳優駿(Jpn1)で3着、兵庫ジュニアグランプリ(G2)で2着の好成績を収めました。さらに、古馬になってもオーバルスプリント(G)を制するなど、短距離ダートを舞台に全6勝を上げたグリーンFでも屈指の活躍馬です。
引退後は繁殖生活に入り、本仔を含めて8頭の産駒を輩出。内6頭がグリーンFから募集されており、クラブとの縁故関係の極めて強い牝系となっています。さらに、デビューした6頭の内の5頭が勝ち上がり、2頭が複数勝利を上げています。
繁殖牝馬としても優秀な成績を収めているアースサウンドですが、一方で懸念されるのは産駒に頓挫の多いこと。初仔アースオブフェイムが喉鳴りを発症したことを始めとして、脚部の不安等で満足な競争生活を遅れなかった仔が散見されます。只、頓挫の内容は多岐に渡っていることから、遺伝的な要因であるとは考え難いと思います。
■配合
Yes It’s Trueを母父に持つ競争実績のある競争馬はアースサウンドの産駒を含めて12頭しか存在せず、傾向性を推測するには十分なサンプル数がありません。その上で、12頭中の8頭が未勝利戦を勝ちあがっており、さらにロイヤルチャージャー系種牡馬との配合に限れば、6頭全てが勝ち上がりを決めています。本仔の父ジャスタウェイもロイヤルチャージャー系種牡馬ですので、本仔の期待値も高いと考えています。
■測尺
募集開始時点(8/3付)の測尺情報は以下の通り。
体高:154.0 胸囲:176.0 管囲:20.5 体重:454kg
誕生日が2月3日で比較的早い生まれと言うこともありますが、申し分のない測尺値を示しており、特に胸囲の176cmは好評価できます。また、一口馬主DBの馬体重成長シミュレーションによれば3歳春の予測体重が484kgと推定され、やはり十分な馬格に成長することが期待できます。
■駐立写真(参考)
スクェアな体型で、背中が短く胸とトモに幅があります。特にトモの大きさが著しく、中殿筋の発達の目立つところを高く評価しました。肩が寝気味で脚も長いことから、距離適性は短距離馬の母似ではなく、父の特徴を継承している印象です。また、飛節が直飛傾向でスタートダッシュが効くタイプには見えない点からも、距離適性はマイルよりも長い方向にある様に思えます。
一方で気になったのは前膝の位置が微妙に弓脚気味に見えること。これが兄姉の頓挫事例を想起させたことから、出資をギリギリまで迷ったのですが、育成が順調に進んでいることと、成長に連れて駐立写真が気にならないレベルに変化したことから、懸念は小さいと判断しました。
■歩行動画(参考)
一見して飛節が最後まで伸び切っている点が目立ちます。これは直飛傾向であることもあると思いますが、一方で踏み込みも深いことから可動域が広く、高評価したポイントです。
歩行速度はキビキビと言うよりはセカセカした歩き方で、落ち着きのない印象も受けますが、特段の問題でもないと思います。一方で、左後肢が外孤気味に見えるところは少し気になりました。
筋肉は微妙に緩さを感じるものの、自分の評価する「プルルッ」に近い質感が感じられて好印象です。また蹴り出すときの筋肉が引き絞れる感じも高評価しました。
■誕生日と母年齢(参考1、参考2、参考3)
本仔の出産時の母年齢は15歳で、参考1に示す通り、出生時母年齢としては産駒の成績が明らかに低下する年齢です。一方で2代母の出産年齢は7歳であることから、母との平均年齢は11.0歳となり、参考2に示す通り成績の下降が開始するギリギリのラインです。何れにしても母年齢的にはネガティブな評価になります。
一方で、本仔の誕生日は2/3であり、参考3に示す通り高い勝ち上がり率の期待出来るレンジです。誕生日のアドバンテージを生かせるように、早期デビューから勝ち上がりを目指したいところです。
■生産と育成(参考)
本仔の生産はハシモト牧場。育成はチェスナットファームに依託されます。アースサウンドの初期の産駒はノーザンFに育成が預託されていましたが、3番仔以降はチェスナットファームに変更されています。これはノーザンFの預託受け入れ枠がタイトになったことが原因ですが、グリーンF内部での産駒への期待順位が相対的に低下していることの裏返しとも考えられます。
個人的にグリーンFからのチェスナットファーム預託馬は評価を下げているのですが、アースサウンド産駒についてはスウィートプロミスが準オープン入りした実績があり、過度な懸念は不要かもしれません。只、非社台系の関東馬は利用する外厩のレベルで見劣りしますので、そこは明らかなマイナス材料となります。ちなみに、スウィートプロミスの場合は外厩としてセグチレーシングSが使用されていました。
■厩舎(参考)
預託先厩舎は美浦の尾関厩舎。グリーンFから預託される厩舎の中でも特に長く関係を保っている信頼度の高い厩舎です。過去、アースサウンド産駒からはガーデンコンサート、サウンドトラック、スィートプロミスの3頭が預託されており、何れも勝ち上りを決めています。特にガーデンコンサートとスィートプロミスは複数勝利を上げており、牝系と厩舎の相性は良好です。
尾関厩舎の厩舎リーディングは概ね50位~100位の安定した成績を残しており、個人的に重視する指標である、「クラブ馬勝ち上がり率=45%、クラブ馬回収率=134%」は、リーディング順位を超えた好成績を示しています。また、近年ではグローリーヴェイズ、スルーセブンシーズ、ドゥレッツァと言ったG1級の重賞馬を続けて管理しており、全体成績以上の中身の濃い成績を残しています。
個人的には厩務員ストライキが発生した際に、尾関師自らが手綱を取ってパドックで管理馬を曳く姿が実直そうで印象的でした。
■価格
募集価格は2400万円。グリーンファームの募集馬としては高額募集馬の範疇に入ります。もっとも、過去のアースサウンド産駒の募集価格は2000万円~2500万円ですので、本仔が突出して高額なワケではありません。むしろ、近年のコスト上昇の中で牡馬2400万円の募集価格は母の産駒としては抑えられているとも考えられます。なお、本仔の種付時のジャスタウェイの種付料は300万円でした。
■テシオ理論
父ジャスタウェイの活性値は4。母父Yes It’s Trueの活性値は2。母母父Fit to Fightが4。母母母父Raise a Nativeは4。何れも劣勢期ですが、「活性値が同じ場合は世代の若い方を優位とする」の自分流解釈を用いると、優先祖先は父ジャスタウエイになります。
一方、基礎体力値は69%です。(自分は基礎体力値の考え方は無意味であると考えていますので、出資判断に影響を与えるものではありません。)
■余談
本仔の募集が発表された際のブログを読み返すと「本仔についてはハシモトFのサイトで中立写真が公開されているのですが、これが中々の好馬体をしており、個人的にはアースサウンド産駒の過去の募集馬の中でもピカイチの出来に見えて仕方ありません。」と高評価していました。さらに、その後に公開された動画でも自分好みの柔らかい動きを見せていたことから、迷わずに出資を決めても良い状況でした。
それが何故にギリギリまで決断を逡巡したかと言うと、兄姉の頓挫歴を懸念してのものでした。実際、本仔の場合も駐立写真が微妙に弓脚傾向に見えたので、そこがネックになったのですが、育成の進捗状況を見る限り強目を開始しても脚元の不安は全く現れていませんし、何より、「ハロン15秒を切るペースでも余裕を持って登坂出来ています。」の牧場コメントが最後の決め手になりました。