2024年度グリーンF募集馬の発表➀

6/29、グリーンFの2024年度の募集馬が発表されました。募集頭数は全21頭で、追加募集のアンデスクイーン2022を含めた昨年の19頭より2頭の増加となりました。その内訳を見ると、社台F(10頭→11頭)、那須野系牧場(6頭→7頭)で各1頭ずつの増加。ノーザン系は増減なしの3頭です。もっとも、一昨年は20頭の募集でしたので、「元に戻った」と考えた方が適切かもしれません。

少し興味深いのは社台F生産馬の頭数推移で、3年間で「8頭→10頭→11頭」と着実に頭数を増やしています。グリーンF全体の姿としては、かつての「社台F生産馬をメインとした牧場系クラブ」に回帰して見えることから、社台F生産馬の中に一定数のアタリが期待できると考えて良いのかもしれません。

なお、2024年グリーンFから募集して欲しい仔馬で採り上げた10頭からは、半数の5頭が募集される結果でした。個人的に残念なのはサザナミの2024が募集されなかったこと。また、ナスノシベリウスの2024の代わりとしては、フリスコベイの2024(またはナスノフォルテの2024)の有力牝馬の仔を那須野牧場から提供して貰えました。

以下、個々の募集馬について第一印象を簡潔に記載して行きます。先ずは前半の11頭から。

※ 馬名の前の■をクリックするとnetkeibaの当該馬の頁が開きます。


フリスコベイの23(父アドマイヤマーズ)那須野

母フリスコベイは生涯成績2勝ですが、兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)で2着の良績を残しています。さらにその産駒からはブッシュガーデン、ナスノカンゲツの3勝馬を輩出しており、ナスノシベリウスには及ばずとも非常に優秀な母馬と言えます。
今年産駒のデビューする新種牡馬アドマイヤマーズの繁殖能力は未知数ですが、マイルG1を3勝したスピード能力は確実に産駒に受け継がれるものと思います。ちなみに、現2歳馬は僅か63頭の血統登録しかありませんが、今日現在で5頭がデビューして0-3-0-2/5の好成績を残しています。

ピュアマインドの23(父イスラボニータ)社台F

叔父に9勝馬マルカフリートの居る牝系。兄姉の勝ち上がり率も優秀で、中央出走した6頭中の4頭が勝ち上がりを決めています。なかなか優秀な牝系に対して父イスラボニータの種牡馬成績が微妙ですが、募集価格次第では有力な出資候補になりそうです。

コンテッサトゥーレの23(父エピファネイア)社台F

エアトゥーレから連なる名牝系で、母コンテッサトゥーレは桜花賞3着の良績を残しています。本仔はその5番仔ですが、上が今一つ成績を残せていない点が気になるところ。
一方で、父エピファネイアは名牝シーザリオの仔ですから、本仔は日本を代表する牝系の結晶であり、その5代血統表は名馬の名前で埋め尽くされています。

ジーナスイートの23(父キセキ)坂東牧場

祖母ディアジーナは重賞を2勝した活躍馬。しかし、その産駒は当時流行したステマ配合が試され続けた結果、小さな仔が多く活躍馬が出ていません。母ジーナスイートも馬格が小さく、1勝クラスを突破することが出来ませんでした。
父は本仔が初年度産駒となる菊花賞馬のキセキ。その種牡馬能力については未知数ですが、基本的にステイヤー脚質であることから、産駒のスピード能力に対する不安は残ります。只、雄大な馬格を誇ったキセキと小柄なジーナスイートを合わせることで、産駒のサイズアップを図ったのかもしれません。只、誕生日が5月15日と遅い点で、募集時の馬格が小さい可能性は高そうです。ちなみに、本仔は坂東牧場の生産ですが育成はノーザンFと予想されます。

メールデゾレの23(父クリソベリル)社台F

曾祖母マジックコードから連なる一大牝系で、そのブラックタイプには多数の活躍馬が見つかります。一方で、母メールデゾレは2勝馬、祖母メイルストロームは1勝馬ですので、局所的に牝系を見ると、過大な評価は出来ません。本仔はメールデゾレの初仔になります。
父は本仔が初年度産駒となる新種牡馬のクリソベリル。雄大な馬格を誇り、デビューから9戦して8勝し、内4勝がG1と言う途方もない活躍馬です。母メールデゾレが短距離ダートで2勝したことを考えるとスピード能力の懸念も小さいと思われるので、あとは初仔でも馬格があれば期待値は高まると思います。

アンデスクイーンの23(父クリソベリル)ノーザンF

母アンデスクイーンは元グリーンF所属馬で重賞を3勝した功労馬。さらにその初仔であるアンデスビエントも関東オークス(G2)を制したことから、繁殖能力の懸念もありません。更に、父クリソベリルは前述の通り期待のダート種牡馬であり、生産と育成がノーザンFであることも踏まえると、懸念材料と言えるものは全く見当たらない状況です。問題は人気がありすぎて、「母馬優先権を持たない者には出資はまず不可能」と言う事実だけでしょう。

サムシングジャストの23(父サートゥルナーリア)那須野

3代母メモリーオブロニーから連なる牝系であり、祖母ツルマルオトメと母サムシングジャストが共に4勝を上げている、活躍馬の出る率が高い牝系です。本仔はサムシングジャストの2番仔で、初仔のイーブンベターは未だデビューをしていません。可能ならば半姉の成績を見極めてから出資をしたい募集馬ですが、それは難しいかもしれません。..と言うのも父が期待の種牡馬サートゥルナーリアであること。エピファネイア、リオンディーズの半兄2頭が種牡馬として成功を収めていることから、サートゥルナーリアの種牡馬としての成功は約束されていると考えて差し支えないでしょう。
一つ懸念材料を上げるとすれば、半姉イーブンベターの馬格が母馬ほどは大きくならないこと。もっとも、これは初仔であることが影響した可能性もありますので、先ずは測尺の発表に注目したいところです。なお、本仔にも母馬優先権が設定されていることから、明らかに出来が良いと逆に出資が難しくなるかもしれません。

パールサイドの23(父ジャスタウェイ)社台F

母パールサイドはフランス産の輸入繁殖牝馬で、現役時代はスペイン2歳牝馬チャンピオンに輝いています。本仔はその5番仔ですが、上の4頭は何れも中央未勝利で終わっています。ある意味、極めてグリーンFらしい募集馬なのですが、それだけに相馬眼が求められる難しい募集馬と言えるでしょう。ちなみに、一つ上の半姉ブルーパール(父ハーツクライ)はセレクトセールに上市され7480万円で落札されています。

シングシングシングの23(父ジャスタウェイ)那須野

祖母シンギングセンセーションは米国産の輸入繁殖牝馬で、その8頭の産駒の内の5頭がグリーンFから募集されている、グリーンFとの繋がりの強い牝系の1つです。母シングシングシングは2勝馬ですが、特筆すべきは1勝クラスで2着×5回、3着×2回の成績を残したこと。「勝ち切れない」と言ってしまえばそこまでですが、この成績は賞金面で非常に馬主孝行な募集馬でした。本仔はその2番仔ですが、初仔は馬主情報が無く、競争馬デビューが難しいのかもしれません。ちなみに、本仔の下にはダイワメジャーが配合されていることから、「本仔の出来が良かったことで、配合相手の格が上がった」と想像できるかもしれません。
なお、今年の特別募集馬として最も蓋然性の高いのは本仔の様に思われます。もしその通りとなれば財布の紐を緩めて取りに行きたい気がします。

ファストアズエバーの23(父ダイワメジャー)那須野

祖母ファストアズライトは中央5勝をした元グリーンF所属馬で、その牝系からは実に8頭もの仔がクラブから募集されています。母ファストアズエバーはその中の1頭で、新潟1000直を中心に3勝を記録した活躍馬です。
父ダイワメジャーは皐月賞を始めとしてG1を5勝した名馬で、その産駒からも多数の重賞勝馬を生み出しています。本仔の種付時の年齢は21歳と高齢で種付け頭数も控えられた状況(種付34頭、出生21頭)ですが、現3歳馬からは重賞2勝のアスコリピチェーノを産出しており、未だその繁殖能力に衰えは見られません。
本仔は芝短距離のエキスパートであった母とスピード能力の高いダイワメジャーの配合であり、産駒のスピード能力に疑いは無いと思います。懸念材料は母の激しい気性で、これを引き継いでしまうと距離適性が極端に短くなってしまいます。

ストロボフラッシュの23(父トーセンラー)社台F

母ストロボフラッシュは勝ち上がり率の高いことで知られるSpeightstownの産駒で、本馬も短距離ダートで3勝を上げる活躍をしています。本仔はその3番仔で、初仔は中央で勝ち上がりは出来ませんでしたが、金沢競馬に転出して2勝を上げて、早々に中央復帰を果たしています。また、2番仔は現時点で未出走のためその能力を測ることが出来ません。
父トーセンラーはマイルチャンピオンシップを制したG1馬ですが、種牡馬入りした後も種付数が延びず、目立った活躍馬を出せていません。本仔の世代の生産数は僅か10頭であり、種牡馬引退も視野にはいる状況です。この少ない生産頭数の中から、昨年もゴールドケープの22がグリーンFから募集されている点は何とも偶然が過ぎる様にも思われ、何らかの事由があるのかもしれません。何れにしても、カタログスペック的には個人的に薬指の動く募集馬ではありません。

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