YGG:Happy Nowの2023に出資

遅ればせながら2023年産馬の出資判断に至る検討内容を備忘録として書き残しておくシリーズです。今回はYGGの2頭目、Happy Nowの2023(ホワイトナイル)について記します。


■種牡馬
父American Pharoah(アメリカンファラオ)は生涯11戦して9勝、内8勝がG1と言う驚異的な成績を残した米国馬です。3歳10月にブリーダーズカップ・クラッシックを6馬身半差をつける完勝をしたところで、あっさりと現役を引退。早々に種牡馬生活に入りました。

その種牡馬成績も優秀であり、多数のG1馬を輩出していますが、特筆すべきは日本競馬との相性が良いこと。その産駒は外国産馬として輸入され中央競馬に出走しており、必ずしも多く無い頭数の中から、カフェララオ・ダノンファラオのG1馬が生まれています。全体成績を見てもJRA既出走馬の勝ち上がり率は54%と良好で、牡馬/牝馬に関わらず高い勝ち上がり率を残しています。

本馬もそのAmerican Pharoah産駒の輸入外国産馬ですが、それが比較的安価にYGGから募集されたことは正直言って「何が起きたのか分からないレベル」です。American Pharoah産駒に出資が出来ると聞いただけで、ノールックで応募を決断しました。

■牝系
輸入外国産馬なので、牝系についての予備知識はありません。カタログスペックを追うと、母Happy Nowは4戦して未勝利に終わっていますが、祖母Meghan’s Joyは18戦して4勝、リステッド競走で2着の成績を残しています。さらに、本仔の叔父NorumbegaはG1を1勝、G3で2着を2回記録した活躍馬です。なお、本仔はHappy Nowの初仔で、出生時の母年齢は14歳です。

■測尺(参考
募集開始時点(2024/10/20)の測尺情報は以下の通り。

体高:155.0 胸囲:182.0 管囲:20.5 体重:456kg

骨太で十分な馬格があり、特に胸囲の182cmが目を惹きます。シミュレーションによる三歳春時の予想馬体重は478kgでしたが、見た目の印象からはもう少し大きくなる気がします。

■駐立写真(参考

一見して首が太くて短いです。肩の角度も立っていて、どこから見ても短距離馬のフォルム。胸前も厚みを感じますが短距離ダート馬に必須のダッシュ力を身に着けるためには更に筋肉量を増やしたい印象。曲飛傾向は回転スピードで勝負する走りに向きそうです。

■歩様動画(参考
キーンランドセールに上市された際の動画と、輸入後に森本ステーブルで撮影された動画では随分と受ける印象が違います。以下は森本ステーブルでの動画を見ての評価です。

歩幅はあまり広くなく、飛節も伸びないが、前肢の出は柔らかく、全体にリズミカルに歩けている印象。短距離適性であれば特に問題はなさそう。前後から見ると、両前肢(特に右前)が外向傾向で、左後肢が内向?飛節も少しガクガクしています。あまり綺麗な歩様とは言い難いのですが、許容出来る範囲と見ました。

※ キーンランドセール上市時の動画はもっと柔らかく動けている印象なので、仕上げて行くと良くなるのかもしれません。

■誕生日と母年齢(参考1参考2参考3
本仔の出産時の母年齢は14歳で、参考1に示す通り産駒の成績低下が認められる年齢。また、祖母の出産年齢も12歳でこれも若年とは言えません。さらに、母との平均年齢は13歳となり、参考2に示す通り多少の減点評価が必要な年齢構成になります。
一方、本仔の誕生日は4/2であり、参考3に示す通り良好では無いがセーフの範疇。

■生産と育成(参考
本仔は輸入外国産馬のため生産については評価対象外。

育成は北海道の森本ステーブル。YGGがメインとする育成牧場です。美浦TC近郊に牧場を有しており、外厩に困らない点はメリット。只、最近は関東にもNEWERAの様な設備に優れた外厩が開場しており、自前の外厩を持つ優位性は低下しそう。

■厩舎(参考
預託先厩舎は美浦の牧厩舎。本仔の前年よりYGGからの預託が開始されています。只、初年度の運用が必ずしも上手く進んでおらず、他会員さんの不満は溜まっている印象。一方で、個人的には過去に出資馬がお世話になったことがなく、評価は保留です。ただ、グリーンFで傍から眺めていた印象は特に悪いものではありませんでした。

ここで、個人的に重視する客観的指標である「クラブ馬勝ち上がり率=38%、クラブ馬回収率=104%」は平均を少し下回るレベル。一方でリーディングは2025年度こそ低迷していますが、それ以前は50位前後をキープしており、YGGの預託先厩舎としては上位になります。ダート戦と短距離戦を得意としている点では本仔の適性にマッチしそう。

牧厩舎の最大の留意点は出走機会の半数に厩舎所属の木幡巧Jが手綱を取ると言うこと。勝負レースでもこの方針は一貫していますから、これが許容できないと牧厩舎所属馬への出資はストレスが溜まることになります。所属騎手を大切にする姿勢は評価できますし、調教を付けてくれる鞍上に託してレースに臨むメリットも無視できませんが、それでも勝ち上がりを掛ける勝負レースでは上位騎手や減量騎手など、適性に応じた期待値の高い鞍上を手配して欲しいところです。

■価格
募集総額は2280万円。YGGの募集馬としては高目の価格帯に入りますが、American Pharoahの牡馬で輸送費用も考慮すると、この募集価格は明らかに破格です。本仔はキーンランドセールで落札されたものですが、よくこの安価レベルで落とすことが出来たと思います。米国におけるAmerican Pharoahの種牡馬評価が日本ほど高く無いことがディスカウントの要因かもしれません。

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