2024年度グリーンF募集馬の発表②

2024年度グリーンF募集馬のカタログスペックを確認したところでの第一印象を簡潔に記すシリーズの後半です。(前半はこちら

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デグラーティアの23(父ブリックスアンドモルタル)ノーザンF

祖母デフィニットから連なる牝系で、本仔の叔父叔母からは4頭がグリーンFより募集されています。中でも叔父ボールライトニングは京王杯2歳S(G2)を制する活躍をしました。一方、母デグラーティアはグリーンF所属馬ではありませんでしたが、小倉2歳S(G3)を含めた4勝馬で、本仔の1つ上の半姉ハイファイスピードはグリーンFから募集されています。デフィニットの産駒は勝ち上がり率が高く、間違いなく優れた母馬なのですが、本仔の出生時の母年齢が17歳と高齢域に入っている点は留意すべきポイントです。また、誕生日が5/9と遅い生まれである点も懸念材料になります。
父ブリックスアンドモルタルは社台F期待の輸入種牡馬でしたが、初年度産駒の成績は社台Fの期待レベルには達していない様に思われます。もっとも、決して壊滅的と言うレベルではなく、芝ダートの両方で重賞勝馬を出しており、配合の成功パターンが明らかにされることで産駒の成績も上がって行くものと思います。

キスミーワンスの23(父ブリックスアンドモルタル)社台F

バルドウィナから連なる超優良牝系で、ブラックタイプには多数の重賞勝馬が存在します。本仔の祖母ワンカラットも重賞を3勝した活躍馬で、伯母ワントゥワンも中央5勝を上げていますが、母キスミーワンスの生涯成績は1勝に留まっています。本馬はその2番仔で、初仔で全姉のカイマナエレエレは中央未勝利のまま地方転出していまいました。この「全姉が走らなかった事実」は重たいのですが、初仔で馬格が400kgに満たなかったことは割り引いて考える必要はあると思います。そう言う意味で、本仔の測尺には注目をする必要があります。

ナスノフォルテの23(父ベンバトル)那須野

ダービー3着馬ハーツコンチェルトが出たことで、今や那須野牧場を代表する感もあるナスノシベリウスから連なる牝系。母ナスノフォルテはナスノシベリウスの2番仔で、生涯成績は2勝です。本仔はその初仔ですが、見極めるべきポイントはナスノシベリウスの優れた繁殖能力がナスノフォルテにも引き継がれているのか否かです。ナスノシベリウスの繁殖能力が優れていたとしても、その産駒の繁殖能力は絶対ではありませんから、ノータイムで出資を決める訳にはいきません。
加えて、父ベンバトルが現状で実績の無い新種牡馬である点にも留意が必要です。ベンバトルは英国産のDubawi産駒で、2018年のドバイターフ(G1)を制しています。このレースではリアルスティール、ヴィヴロス、クロコスミア、ネオリアリズム、ディアドラ、と言った早々たる日本馬を下しており、ベンバトルの能力を印象付けるものでしたが、どうしても欧州種牡馬が日本でスタッドインした時のスピード不足は懸念材料になりますから、出来れば第一世代の成績は確認しておきたいところでした。

※本仔は育成時の駐立写真が公開されています。預託先は武井亮厩舎。

ファビュラスギフトの23(父マインドユアビスケッツ)

ファビラスターン から連なる優良牝系で、近親には海外G1を制したシャドウゲイトや中央5勝のサトノタイガーが存在します。母ファビュラスギフトは元グリーンF所属馬で中央3勝の活躍をしています。本仔はその初仔なので馬格が小さく出る不安がありますが、誕生日が2/7と早い生まれである点はプラスに働くと思います。
父マインドユアビスケッツは米国からの輸入種牡馬で、現役時代にはドバイ・ゴールデンシャヒーンを連覇する大活躍をしています。短距離ダート馬のマインドユアビスケッツですが、その産駒にはスピード能力を伝えるのか、ダートに限らず芝のマイル~中距離の手広い条件で走る馬を出しています。特に初年度産駒からデルマソトガケを出した影響は大きく、繁殖の質が上がった後は種牡馬成績が一段上がることが予想できます。

グランマリアージュの23(父マインドユアビスケッツ)

母グランマリアージュは元グリーンF所属馬で前半の部に記載したファストアズエバーの全妹です。姉と同じく気性面の危うさから距離適性は短くなりましたが、本馬は芝とダートの両方で1200Mを制しています。
父マインドユアビスケッツとの配合として考えると、父母共に短距離脚質であったことから、本馬はスピード能力に優れた適性を示すものと思います。そう言う観点で、馬格のあることは特に重要になりますから、測尺の値には注目をしたいところです。

※本仔は育成時の駐立写真が公開されています。預託先は奥村武厩舎。

ジュリエットベールの23(父マインドユアビスケッツ)

Notableから連なる牝系で、祖母マリアロワイヤルはG2を含めた海外4勝を上げています。母ジュリエットベールは1勝馬ですが、その産駒は既出走の2頭が何れも勝ち上がりを決めています。兄姉はマイル前後で良績を残していることから、本仔の脚質もマイル前後になると推察されます。サンプル数は少ないのですが、ジュリエットベールが優良繁殖牝馬であることは恐らく疑いないと思います。
本仔の懸念材料は牝馬で誕生日が5/8と遅いこと。馬格が小さい場合はダートでは難しいので芝で勝負する必要がでてきます。ちなみに、半姉アトリウムチャペルは400kg前後で馬格が小さく、ダート適性の兄とは違って芝で結果を残しています。

シネマソングスの23(父ルヴァンスレーヴ)

祖母アースリヴィングから連なる牝系。アースリヴィングを始めとして、全ての産駒がグリーンFから募集されています。本仔が予定調和で募集されたことで、完全記録は守られました。アースリヴィングは兵庫JRグランプリ2着を含めた3勝馬、母シネマソングスは4勝馬ですから、牝系を引き継ぐ意味でも本仔への期待感は自ずと大きいものになります。
父ルヴァンスレーヴは今年産駒のデビューする新種牡馬。その種牡馬能力は未知数ではありますが、現役時代の圧倒的成績を考えるとダート系種牡馬としての成功は疑いない様に思われます。個人的な懸念材料は厩舎が確定的に思われるところでしょう。

シーニーンガールの23(父レイデオロ)

母シーニーンガールは米国からの輸入繁殖牝馬で、現役時代には重賞2勝の成績を残しています。本仔はその6番仔で、2番仔のダイワダグラスは準オープン入りを果たしました。
父レイデオロは初年度産駒が昨年デビューした種牡馬ですが、その成績は社台Fの期待レベルには全く届いていない状況です。特に牝馬の成績が壊滅的で45頭デビューして僅か2頭しか現状で勝ち上がりを決めていません。只、馬格の小さな仔の多いレイデオロ産駒の中で、馬体重が460kg~500㎏ある産駒は一定の成績を残す傾向が明らかなって来たことから、本仔の馬格が十分大きいのでれば不安は小さくなりますので、先ずは測尺の発表に注目をしたいところです。

エバーブロッサムの23(父ロードカナロア)

サクラサクⅡから連なる牝系で、伯母エイジアンウインズはビクトリアマイル(G1)を制しています。また、母エバーブロッサムはオークス・フローラS・フラワーCで何れも2着の成績を残しており、生涯成績1勝ながら競争成績は極めて優秀です。本仔はその6番仔で、上2頭に続いてロードカナロアが配合されていますが、この2頭は現時点で中央未勝利です。また、叔母レガーロブロッサムは元グリーンF所属馬でしたが未勝利に終わっています。
父ロードカナロアは改めて語る必要の無い大種牡馬です。只、エバーブロッサムとの配合として見ると、全兄2頭が現時点で中央未勝利であることから、組み合わせとしての不安を感じないでもありません。一つ上のポッドフラッターはセレクトセールで9020万円の落札ですが、その成績不振が本仔がグリーンF募集になった事由の様な気がします。

ピンクレガシーの23(父ロゴタイプ)

前述のキスミーワンスの23と同じく、バルドウイナから連なる牝系です。キスミーワンスとピンクレガシーは姉妹ですので、本仔とキスミーワンスの23は従妹の関係にあります。母ピンクレガシーは元グリーンF所属馬で、当時としては高額の総額3000万円で募集されましたが、生涯成績は1勝に留まっています。本仔はその初仔ですが、ピンクレガシー自身が小柄な競争馬であったことから、本仔の馬格が十分なサイズに出るのかは不安の感じる所です。
皐月賞馬の父ロゴタイプは生涯G1を3勝した活躍馬ですが、血統背景が微妙に寂しいことが原因なのか、社台スタリオンでは然して重用されない状況が続き、2023年度からレックススタッドに移籍をしています。なお、本仔の種付年度は2022年ですので、社台スタリオンで種付された最後の世代となります。

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