この度、DMMバヌーシーの口座開設を完了しました。切っ掛けは今年の募集馬である「シスタリーラヴの2020」に一目惚れしたことに拠るものですが、入会に際してはバヌーシーの仕組みについて精査しましたので、今回はそこで考察した内容について書き残したいと思います。
DMMバヌーシーについてはその運営開始時に眉を顰める状況が散見されましたが、最近は普通に改善が進んでいるとの噂を耳にしていました。特に、最大の問題点であった「募集価格が高すぎる問題」に関しては、セレクトセール等での相場を無視した落札が見られなくなり、真っ当な仕入れ価格に落ち着いています。
また、運営開始当時は高額な仕入れ価格に対して、更に大幅なプレミアムを乗せた価格で募集を募っていましたが、これについても大幅に改善がされています。現在の募集価格はセールの落札価格と殆ど同額に設定されており、諸経費を考慮すれば、むしろ割引価格でオファーされていると考えることが出来ます。
この割安な募集価格の設定は、明らかなビジネスモデルの変更を意味しています。今風のビジネスワードで表現すれば、「サスティーナブルな利益構造にシフトを図った」と考えることが出来ます。要するに「会費」と言うサブスクリプションを収入の源泉とし、馬代で利ザヤを稼ぐことを放棄したと言うことになります。
それでは、この「会費」が無用に高いかと言えば、そう言うこともありません。1口あたりの月会費が825円で、5口以上は無料になります。即ち、最大で3300円/月ですから、これは一般の一口馬主クラブと同じ金額です。むしろ、小口の会員にとっては優しい設定と言うことも出来るでしょう。ちなみにバヌーシーの1口は募集価格の1/2000に設定されており、4口出資して1/500相当ですから、これはキャロットやシルクと同等と考えて差し支えありません。
つぎに、「何故バヌーシーではこの様なスキームが成り立つのか?」について考察すると、これは「企業規模によるスケールメリットによって成立する」と考えられます。DMMは社台やサンデー等の老舗クラブと比較しても、遥かに大きな企業規模を誇ります。当然、従来型の一口クラブと比較して10倍以上の会員数を集めることは容易であると想像できます。そして、バヌーシーの運営は会員数を増やすことに特化した戦略であることが判ります。
・1口を1/2000に設定して新規入会のハードルを下げる
・1頭の出資を4口に制限し、多くの会員が出資可能とする
・会員サービスのIT化によって、販管費を縮減する
・システムをDMMグループと共通し維持費を削減する
改めて考えてみて、良く練られたビジネスモデルだと感心しました。固定費と販管費の割合を抑制したことで(会計的に見るとROSが高い)、会員数の増加がダイレクトに収益向上に繋がり、それは募集馬の頭数を増やすことで実現が可能です。おそらく、現在の土台を固めたら拡大路線にシフトするものと推測されます。
そして最も重要な点は、「バヌーシーは会員から見ても、コストパフォーマンスの高いクラブである」と言うことです。これはクラブ側と会員側がWin-Winの関係にあることを意味しています。バヌーシーにとって最大の会員サービスは募集馬が好成績を残すことであり、この目標は会員の期待と合致します。これは、バイヤー系一口馬主クラブの本来あるべき姿ですが、それを現実化する要因がスケールメリットと言うことになります。
バヌーシーの今後の課題は「適正な価格で馬を競り落として、会員に提供すること」にあり、それには高い相馬眼を有したバイヤーを配して、コストと能力のバランスの取れた馬を仕入れることが不可欠です。
そして、適正な価格で仕入れた競争馬を原価で募集してくれるのであれば、あとは会員自身の相馬眼に委ねられることになり、これは一口馬主会員にとって「望むところ」に他なりません。
バヌーシーがそのビジネスモデルに従って拡大を進めて行けば、東サラを始めとしたバイヤー系クラブの運営は確実に厳しくなると予想されます。規模で対抗できない以上、(例えば自家生産などの)独自色を見出さない限り、企業として生き残れないかもしれません。
現実的にDMMと同じ路線を採ることが可能な企業があるとすれば、GMOグループあたりしか思いつきません。ウマ娘のサイバーエージェントが一口馬主クラブに参入する可能性が噂に上がりましたが、現在のサイバーエージェントは金融業を有していないことから、容易にDMMと同じことは出来ません。
もしサイバーエージェントが一口馬主クラブを開始するのであれば、既存のクラブを買収して、その上で前述の独自色を盛って差別化を図ることになる筈です。それこそ、ウマ娘と関連付けて募集馬を提供したら人気殺到は疑いありません。只、長期的に人気を維持できるかは微妙ですが..。